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Mission!! 第1話~第7話

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第7話「First Mission!!」


第7話「First Mission!!」
サラはたぶん、この時がはじめてのドレスだったに違いない。生まれてからスカートさえも着たことのない彼女は、こんな姿で作戦決行するのは無理があると思っていた。ドレスはいざとなったら破けばいいが、このヒールの高い靴には困った・・・。
そんな事を考えながら女性たちに案内されるまま、足元のドレスを踏まないように注意して歩き、空港の駐車場へと向かっていった。

駐車場では時計を気にしながら、アンドレが車の中でひたすらサラが来るのを待っていた。
時計を気にするといっても、夕食会の時間を気にしていたわけではない。早く彼女が自分の隣に来てくれることを待っていたのだ。
しばらくすると、空港のロビーから出てくる彼女の姿が見えた。やはり思っていた通り、彼女にはこんな姿もよく似合う。そう思ったアンドレだった。
国王自ら、サラのために車のドアを開いた。近くまできた彼女を、じっと見つめてしまったアンドレだった。
サラは少し照れながら、複雑な気持ちを抱いていた。任務優先なのか?それとも・・・。
「とてもよくお似合いです。」
「ど・・・どうも・・・」
私はボディガードとして雇われたはず。なぜこんなことを??婚約者役になるのは、国王を守るため??
多分、今日だけの特別任務に違いない。明日はまた違うシチュエーションが待っているはず。そんなことを考えながら、サラは車の後部座席に座った。

案内してくれた女性から、今まで見たこともないきれいな装飾が施してある、少し大きめの女性用のバッグを持たされた。中をあけてみると、9ミリ拳銃と小さな小箱が入っていた。
『ブレット??』小箱を見て拳銃の予備弾が入っているのかと思いきや、中には男物の時計が入っていた。アンドレは彼女の左隣の席に乗り込んでくると、車は静かに走り出した。
「サラ、私のことをどうぞウィルと呼んでください。私の家族はみなそう呼んでいました。ですからあなたも」
「了解・・じゃない・・・・わかりました。」
サラは隣に座った国王との会話を恐れ、できれば何もしゃべりたくないと思っていた。一体何を話したらいいのか、こんな私と楽しめる話なんか何一つない。アメリカからずっと一方通行でしゃべりまくってた、あのおばさんのほうがまだマシだ。
どうしようもない二人の間に流れるこの空気を何とかしたくて、とっさに鞄の中に入っていた時計を確認した。
『中は追尾発信機・・・これを彼に渡せというのね。』
「どうしましたか?」
「あ・・いえ・・・あのウィル」
「はい。」アンドレはじっとサラを見つめ、次の台詞を待っていた。おもむろに目が合ってしまったサラは、今、目の前にいるこの男の青い瞳に吸い込まれるような気分を感じた。
『なんてきれい・・・・外人部隊の時の、あのがさつで厳ついやつらと全くちがう・・・』
次の台詞を語らないサラに、アンドレが少し困惑した表情をして見せた。
「もしかしてお疲れですか?ですよね・・・アメリカからの長旅のあと、私の都合で食事に誘ってしまうなんて・・」
「いや、・・そういうわけではない・・・これを・・」
そういって時計の入った箱を差し出した。なぜにこんなに心臓がドキドキしているのだろうか?
「・・・これを・・・私に?」サラは黙ってうなずいた。アンドレは自分のはめていた時計を外し、サラからプレゼントされた時計をはめると嬉しそうに微笑んで見せた。
「Je vous remercie」(どうもありがとう)
「Je vous en prie」(どういたしまして)流暢なフランス語だった。

フォイオン首都にある、中央映画館を見下ろすことのできるビルの屋上に人影が見える。ベンとホウィだった。双眼鏡で映画館前の通りを監視していたホウィが口を開く。
「いたぜ、教官。10時の方向、こちらが予想していた狙撃ポジションに巣をつくってやがる」
「やはりな・・・・」ホウィが覗いている双眼鏡のその先には、中央映画館前をターゲットに睨んでいる二人の男が、狙撃銃を手に待ち構えている姿が映し出されていた。
彼らは、映画館前を通るはずのアンドレ国王を拉致すべく、そこに位置して狙撃態勢をとっていたのだ。
「それと・・・黒いバンが隣の道路に1台・・南の道路にもう1台・・・。」アンドレ国王とともにいるはずの王室警護担当の警察官を狙撃して、取り残された彼だけをあの黒いバンに収容して逃走する計画だ。
『悪いな、マシュー・ジョルジュ・・・。そっちの計画は見え見えだ・・・』
ベンは勝ち誇ったようににやりと笑うと、無線ヘッドセットに取り付けられたマイクを口元に寄せ、遠く離れた湾岸倉庫の一角にいるフォイオン軍兵士たちに連絡を取った。

誰もいないフォイオンポートでは、立ち並ぶ輸入品を預かる大型倉庫が無数に立ち並んでいた。その一角に、フォイオン陸軍102部隊の精鋭が密かに集合していた。
指揮官の無線ヘッドセットにベンからの声が飛び込んできた。
「そろそろUGVが通るはずだ。こっちがおっぱじめると同時にフランツの家族を救出する。」
「了解」
UGV(unmanned Graund Vechile)とは、無人の陸上車両で現段階では偵察、地雷発見作業やNBC対策等に使われている。欲を言えば無人車両に攻撃能力を備えたいところだが、敵味方の識別する能力がまだ低いため、そういった車両は世界でもまだ実戦配備されていないのが現状だ。

連絡を受け取った指揮官がそこに取り巻く12人の部下に合図を送った。誰もいない静まり返った湾岸倉庫地区に、かすかに編上靴から発する足音が聞こえてくる。
静かに・・・静かに・・・。彼らが遠巻きに見ている倉庫はひとつ。
その薄明かりがこぼれている倉庫内には、宮殿で働く第2秘書フランツの妻と子供が縛られ捕らえられていた。黒いコスチュームを着た荒々しい男たち5人が、手に銃を構えて家族を見張っていた。

フォイオン陸軍102部隊 この部隊は王室専用の近衛兵とも呼ばれ、首相の承諾なしで発動できる、いわゆる別働組織だ。
一般の軍組織とも切り離され、王族の危機またはそれに相当する危険があると判断される場合にのみ、国内に限り発動するレンジャー部隊である。陸軍ではこの部隊要員に選ばれることを誇りとし、花形扱いされていた。

そんな頃、宮殿の一室でこの会話を心配そうに聞いていた男がいた。フランツはソワソワしながら落ち着きのないそぶりで、ソファから立ち上がったり、また座ってみたりしていた。彼の周りには、102部隊の通信兵か、または警察官らしき男達が物々しく、その通信を聞いていた。飾り気のないテーブルの上には、無数のパソコンや無線装置がところ狭しと置かれている。
突如、まるでその静寂を切るかのように、無線機からベンの声が聞こえてくた。

「来た!あれだ!」
「!!どうか成功してくれ!!」その声を聞くや否や、祈るように両手をぎゅっと握り締め、家族の無事を願うフランツだった。



 
作品名:Mission!! 第1話~第7話 作家名:Rachel