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永山あゆむ
永山あゆむ
novelistID. 33809
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ヘリテイジ・セイヴァ―ズ ノベルゲームシナリオVer.

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   ※冷たい風の音

   ヒュウウウウウ……。
   夏なのに数秒間、凍てつく空気が流れる。

   ※青い防護服を着た丸峰、ムキになる

【丸峰】「と、とにかく! これで終わりなのでしょう? とっとと、このまま研究所へと戻りましょう!」

   ※青い防護服を着た丸峰の立ち絵を表示しない

   丸峰はムキになって、先へと進んだ。
   そんな彼の姿に、クスクスと私は笑った。

   ※立ち絵を表示しない

【丸峰】「おじょうさま!」
【乙愛】「ふふ、わかってる」

   私は丸峰の後をついて行った。

   ※フェードアウト

■未来の宮島 研究地区 そびえ立つ廃墟のビル 昼(紫色の空に覆われている)

   ※ここのシーンはCGで表現するため、立ち絵は表示しない
   ※フェードイン

   階段を登っていき、私たちはたくさんの研究棟が集まる、『研究地区』と呼ばれる場所へと着いた。
   と言っても、五年前による事件で廃墟同然となったが。
   これも、あの超常現象によるものである。
   まさにこの棟は、二つの原因を引きおこした象徴なのかもしれない。

【乙愛】「五年も経った今でも変らないとは、な」

   ※横ワイプ

■未来の宮島 研究地区 ビルの前にある高台 本州の空と宮島を見つめる乙愛と丸峰 昼(本州の青い空と宮島の紫の空が混じっている)

   ※ここのシーンはCGで表現するため、立ち絵を表示しない
   ※横ワイプ

   ビルの前にある高台から見える景色。
   ここからだと、島の豹変ぶりがはっきりと分かる。
   海は凍ってしまい、船は動けなくなってしまい、一部の地域では火が立ち上ったままだ。
   この島と反して澄み渡る青い空が漂う本州。
   日本全土でもなっているのかと思ったら、この島だけがこんな状況になっているのだ。
   まるで、ここだけ切り離された世界となっているかのように。

【乙愛】「……」

   本州を見るだけでふつふつと怒りが込み上がってくる。

【丸峰】「お嬢様……」

   丸峰が心配そうに私を見つめてくる。
   私の家庭教師を経て、そして執事になって約7年のつき合いだ。
   自分の弱さと強さをあの双眸でたくさん見てきている。
   だから――。

【乙愛】「大丈夫だ。覚悟はできている」

   やや強い口調で言った。
   すこしでも安心できるように。

【丸峰】「……」
【乙愛】「逃げずに立ち向かって見せるさ。逃げる、もんか……」

   私は半ば言い聞かせるように呟いた。

【乙愛】「丸峰、行くぞ」
【丸峰】「はっ」

   丸峰は胸に手を当てて一礼をし、研究棟へと入っていく私の後へとついて行った。

   ※フェードアウト

■未来の宮島 研究地区 廃墟棟 昼

   ※ここのシーンはCGで表現するため、立ち絵を表示しない
   ※フェードイン

   中も紫の有毒な煙が充満していた。
   ガラスや植木鉢の破片が廊下に転がり、蛍光灯もぶら下がっている。

【丸峰】「こうして見るとひどい有様ですな」
【乙愛】「ああ、けがしないようにな」

   わたしたちは慎重に歩いて、正面にあるカウンターへと進む。

   ※横ワイプ

■未来の宮島 研究地区 廃墟棟 カウンター 隠し通路開く 昼

   ※横ワイプ

   カウンターへとついた私たちは、机についている黄色いボタンを押す。

   ※床が動き出す音

   ガゴン……。
   受付嬢たちがいる方の床が静かに動きだし、地下へと進む隠し通路が開く。
   私たちは防護服の額に部分についているライトで照らし、ゆっくりと降りていく。
   この中へ入ったら、入口が自動的に閉まるからだ。

   ※フェードアウト

■未来の宮島 研究地区 懐中電灯で照らされる扉を見つめる乙愛と丸峰 暗い

   ※ここのシーンはCGで表現するため、立ち絵は表示しない
   ※フェードイン

   階段を下りていくと、研究所や化学工場などで見かける分厚い大きな扉が照らされた。

【乙愛】「やっとついたな」

   私は扉に手をかざす。
   扉はゆっくりと自動で開いて行く。
   その先にあるのは――。

   ※フェードアウト

■未来の宮島 研究地区 秘密の研究施設 明るい

   ※フェードイン

   私たちの秘密の研究施設だ。
   ここは、建設段階で父さんが業者に頼んで建てられた施設だ。皮肉にもこういう形で使われることになってしまったが。
   宿泊設備も完備しており、空気中に運ばれるジャームも、あの大きな扉の見えない防御壁によって浄化している。
   ここにいる者たちのほとんどは、この上にある廃墟と化した研究棟で働いていた。

   ※立ち絵は表示しない

【乙愛】「ただ今、戻った」

   ※(研究者(男)A)の立ち絵を表示。驚く
   ※(研究者(男)A)の立ち絵が上下に揺れる

【???】「!」

   私が声をかけた瞬間、ドアの近くで立体映像照射パソコンを使って作業をしている、メガネをかけた研究者が私と丸峰に気づく。

   ※研究者(男)A、驚く

【研究者(男)A】「みんなー!」

   ※研究者(男)Aの立ち絵を表示しない

   男は立ち上がり、奥で作業をしている者たち手を振って合図を送る。
   やれやれ、また始まるのか。

   ※集まる音

   研究者たちは、ぞろぞろと私と丸峰の前に集まる。

   ※立ち絵を表示しない

【研究者(男)A】「せーの!」

   ※すぐにCGが切り替わる

■未来の宮島 研究地区 研究者たちが揃って礼をして、慄く乙愛 明るい

   ※ここのシーンはCGで表現するため、立ち絵は表示しない
   ※画面が前後に揺れる(奥に行ったり戻ったりする)

【研究者たち】「おかえりなさいませ! お嬢様」

   上流階級で生きる人間ではないのに、メイドのような見事な応対。
   毎回、外から帰ってくるときにやるのだ。
   やれやれ、お嬢様と呼ばれるのは丸峰だけで十分なのに。

   ※フェードアウト(さっと暗くなる)

■未来の宮島 研究地区 秘密の研究施設 明るい

   ※フェードイン(さっと表示)

【乙愛】「う〜ん、私は皆と同じように迎えてほしいのだが……」

   ※立ち絵を表示しない

【研究者(男)B】「何を言ってるんですか! この島の未来のために戦ってくれるお嬢様をぞんざいにできませんよ!!」

   髪をホウキみたいに立たせた男が熱弁を振るう。
   それに続けて、

   ※立ち絵を表示しない

【研究者(女)A】「そうですよ!」
【研究者(女)B】「あなた様こそ、この島の救世主!」
【研究者(男)C】「我々、島の民の希望!」

   ※研究者たちがガヤガヤいう音

   次々と称賛の声を浴びる。
   ……。
   これで何回目だろうか。何度も言われると耳が痛くなる。
   おまえたちの気持ちは痛いほど分かったから!

【乙愛】「分かった! わかったから、これを脱がしてくれ!」