小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
パシフィスタ
パシフィスタ
novelistID. 34567
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

夏の陽射し

INDEX|7ページ/15ページ|

次のページ前のページ
 

「レギュラー以外は集合しろ。これからポジションと打順を発表する。呼ばれなかった者もいつでも試合に出られるように準備をしておけ。」


俺は勇太の隣で名前を呼ばれるのを待った。ちなみに勇太は小学校、中学校と野球部で、遊撃手の経験があった。

「1番、遊撃、庄司勇太。」

「は!はい!!」

「やったな、勇太!」

「おう!」


「8番、投手、渡辺和之。投手はお前しかいない。頑張って最後まで投げ抜いてくれ。」

「はい!!」





スタメンが発表され、俺たちは各自ポジションにつく。

「頑張って〜!」

観客席では、愛李と小木曽さんが応援していた。その隣には実澪と鷹野さんがいた。
実澪は祈るように手を組み、俺を見ていた。

少し離れた所には日比谷先輩のファンクラブが陣取って、声援を多くっていた。
本当に・・・日比谷先輩のファンクラブ、どれだけいるんだよ・・・





俺は投球練習を始める。


暑い。


でも、心地よい暑さだ。緊張はしていない。ちゃんとボールに指がかかっている。変化球の曲がりも悪くない。

(行ける。)


根拠のない自信が俺を包んでいた。抑えてみせる!

1回の表、レギュラーチームの攻撃。

1番、二塁手、片山先輩。部内で一番足が速く、打球を転がされたら内野安打は覚悟しなければならない。


俺はゆったりとしたモーションから球を投げる。

1球目、外角低めに直球。シュルシュルという気持ちのいい音を立てて、キャッチャーミットに収まる。

「ストラーイク!」

2、3球目は内閣高めにボールがスっぽ抜ける。1ストライク2ボール。

4球目はカーブを外角にもっていき、片山先輩はこれをカットする。

5球目、三振を取りに行った直球が真ん中に入っていった。

これを見逃すはずも無く、打球は二遊間をきれいに抜けていく。


『ナイバッティング!!!』


一番出してはいけないバッターを出してしまった。大体、経験の浅い俺はクイックモーションが苦手だ。


2番、右翼手、堂本先輩。これぞ2番、というバントの名手。

初球、ランナーを気にして、ボールは外角高めへ。

2球目は直球が内角をえぐり、ストライク。


(?バントはしてこないのか?)


心配になり、ここで一球牽制をする。

「タイム!」

キャッチャーの結城将太が俺のところにやってくる。彼は中学時代はキャッチャーを経験していたそうだ。

「カズ、そんなに心配しなくていいよ。まだ1回だぞ?走られたら走られたでいいじゃないか。バントされたらバントされたでいいじゃないか。一つ一つアウトを取ればいいんだよ。大丈夫だ。お前の球は先輩たちでもそんなに打てやしないさ。」

ミットで胸を二、三度叩かれる。

「そうだな。頼りにしてるぜ。相棒!!」

「任されよう!」


結城はそう言うと走って下の位置に座る。俺は深呼吸し、一瞬だけ実澪の方を見る。
一瞬見ただけなのに、落ち着くことができた。

「ヨッシャーー!!打たせていくぞ!!バックちゃんと取れよー!」

結城が野手陣を盛り立てる。


吹っ切れた俺は、堂本先輩を2球続けて内角への直球で三振に打ち取る。

3番、三塁手、キャプテンの日比谷先輩。勝負強い打撃とバットに当てる技術はチーム1の能力だ。


2球目に片山先輩に盗塁を許すものの、日比谷先輩をショートゴロ、4番の大友先輩をセンターフライに打ち取り、1回を無事、無失点で終えた。


「ふぃーー。こりゃ疲れるな。」

ベンチ内に笑いが巻き起こる。

「はい、これ、タオルね。」

と、俺のタオルを手渡してきたのは、1年生のマネージャー、松本花音。
小さな体で、一生懸命部員を支えてくれるため、部員にも人気があった。

「おう、ありがとう。」

俺は一言礼を言うと汗を拭い、スポーツドリンクを少し飲むと、結城とキャッチボールを始める。


1回の裏、俺たちの攻撃。

先頭打者は勇太だ。

「勇太くーん!がんばれー!」

愛李と小木曽さんが黄色い声を飛ばす。
ところが勇太は集中して聞こえていないのか、声のする方には目もくれないで打席に入る。


レギュラーチームの先発は当然飯山先輩だ。
投球練習を見る限り、調子はそこそこといったところだろうか。


「勇太ー、落ち着いてよく見て行けよー!!」


1年生の、試合に出ている者、出ていない者双方が必死に声をだしていた。
俺もキャッチボールの合間合間にできるだけ声を出すようにしていた。


勇太は1球目、2球目と見逃し、1ストライク1ボール。

3球目、4球目をカットして、粘る。


俺とは比べ物にならないくらい、ミットがいい音を立てている。伊達に中学No.2の投手なだけある。

しかし、それに食らいつく勇太を俺はすごいと思った。


そんなことを思っている間に打球はセンターの前にポトリと落ちていた。


『ナイバッティーーン!!!』

なんと勇太は飯山先輩の5球目をきれいに打ち返していた。

「よーし!先頭バッターが出たぞ!続いて行けよ!!」


俺は味方ベンチを鼓舞する。


ところが、現実はそんなに上手くいかない。

2番、3番、4番と三球三振に倒れ、あっという間に攻守交代になる。

「大丈夫大丈夫!!まだまだ試合は始まったばかりだぞ!!!切り替えてきっちり守るぞ!」


結城の大きな声が味方に響く。


「よっしゃ!!」

俺も一つ大きな声を出してからマウンドに向かう。


「2回の表!!締まっていくぞ!!」

『おう!!!!!』




作品名:夏の陽射し 作家名:パシフィスタ