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パシフィスタ
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夏の陽射し

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第1章 春の出来事




「よしっ」

春の体を包み込むような暖かい日差しが、畳の香りがほのかに香る部屋に差し込む。そこで俺は新たな生活を始めようとしていた。

地元では偏差値が高いと評判の、栄光高等学校に奇跡的にも合格した俺。
親も親類もびっくりしたほど、誰も合格できるとは思っていなかった高校に合格したのだ。
親はそれを地元の友人に自慢して回ったくらいだ。

そして誰よりも喜んでくれたのはお向いの家に住む一つ年上の、池上実澪だった。

俺が生まれた時から、親同士が仲が良かったこともあって、一緒に遊んでくれた(らしい。実際俺は3〜4才頃からしか記憶にない笑)。

俺が2歳位の頃には、大して体格も変わらない俺を抱っこしたまま階段から降りようとして二人とも仲良く落ちて鎖骨を折ったらしい。


そんな幼い頃からの姉ちゃんも、同じ栄光高等学校の二年生で尚更喜んでくれたようだ。


遅れたが、俺の名前は渡辺和之。見た目はパッとしない、そこらへんにいる感じの、まあそれなりにおしゃれした高校生だ。身長も高くない。どこにでもいる若者って感じかな。

今日は待ちに待った入学式。同級生にかわいい子はいるのか、いやそれ以前に友達がたくさんできるか、色々と不安だった。

今まで経験した二回の入学式とは訳が違う。中学の友達は一人もおらず、周りは知らない人でいっぱいだ。


校門を通り過ぎるといかにもインテリそうな、新品の制服を着た男女。比率的には丁度五分五分くらいか。
土間には名簿順にクラス分けがされていた。
「え〜と?俺はどこだ?・・・お!あったあった!9組か。ずいぶんクラスがあるんだな、全部で13クラスもあるのか」

小学校も中学校もクラスが少なくって、誰一人としてしゃべったことがない奴は居なかったから少し驚いた。
「これだけ人数がいるとやっぱり三年間で一言もしゃべらない奴もいるんだろうなぁ」

「てか、だいたい9組ってどこだよ。何階だよ。」

土間でいきなり迷っていると

『お!来たな!新入生のガキンチョ!!』

後ろから聞きなれた声が聞こえたので振り返ってみると、実澪がいた。

「あれっ?なんでいるの?今日入学式でしょ?2年生は休みじゃないの?」


「私は新入生の誘導係りに任命されてるんだよ。教室まで案内してあげるよ。」


不意に実澪に手を握られ、教室まで連れて行かれた。
その先の教室では、緊張感に溢れた空間があり、一瞬ひるんでしまった。

「ここが1年9組だよ。久しぶりにきたなぁ。」

「え?なんで?」

「だって私も9組だったもん。」


そんな話をしていたとき、後ろから声をかけられた。

「すいません。教室にいれさせてもらってもいいですか?」

俺が振り返ると、そこには今まで見たことがないくらい顔の小さな女の子が立っていた。

(あ、かわいい。この子)

一瞬俺がそんなことを思っていたときに

「あっ、ごめんね!」
実澪は軽く頭を下げ、教室のドアへの道を開けた。

すれ違いざまに名札を見たところ『小木曽茜』と書いてあった。

(茜ちゃんか・・・後で声かけてみよ)

「・・・い!・・・・・・おいっ!!」

俺がこれからの高校生活でのバラ色の未来を妄想している間に、不意に腹を実澪に殴られた。


「クッハ・・・いってえ!!」

「見とれてんじゃないの!和ちゃんには私という美人が近くにいるだろうが!!」

「・・・あっそ。じゃ、俺はバラ色の高校生活に足を踏み入れることにするよ。」


実澪のその言葉を冗談としか受け取れなかったことが実澪を傷つけてしまった。

俺は実澪に軽く手を振って教室の自分の席の方へ向かっていった。

「・・・冗談にしか聞こえない・・・か。」

実澪の顔には寂しさが滲み出ていた。


入学式も終わり教室に帰ってきた俺は、誰に話しかけようか迷っていた。

(とりあえず、隣の席の子に話しかけてみるか。名前は・・・須田・・・さんか・・・)

「須田さん、俺隣の席の渡辺です。これからよろしくね。」


「・・・え?あ・・どうも。私は戸神玲奈です。よろしくね。」


(うわぁ・・・すっごく細いけどめちゃめちゃ可愛いじゃないか!!)

俺は、玲奈のあまりの可愛さに一瞬見とれてしまった。

「え?私の顔に何かついてる?」

「え・・い・・・いや!!な!!何も!!!」

「?」

「いや、可愛いなあと思ってさ」


(隣の席がこんな可愛かったら授業どころじゃないな)

「え、えぇぇ!!・・・ぁ・・・・すいません。大きい声でちゃった///可愛くなんかないよ・・・」

玲奈のこの反応に俺は心を根こそぎ掴まれて、一瞬にして惚れてしまった。

今日は入学式と簡単なオリエンテーションで学校は終わり、ひとまず家に帰った。


作品名:夏の陽射し 作家名:パシフィスタ