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アインシュタイン・ハイツ 302号室 藤井祐一

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学生の仕事?


 一連の準備を終えた祐一は、年末年始と盆休み以外、午後九時まで開いている図書館で宿題を済ませていた。
 時間的な問題も有るのか、内部にいるのは殆どが受験を控えた三年生と司書くらいである。一応、一般にも開放されている施設なのでもう少し私服の人間がいるだろうと思っていたのだが、この時間、私服で図書館にいる利用者は祐一しか居なかった。
 祐一は手早く翌日の予習用ノートを作り終え、待ち合わせの時間まで何をするべきか考えていると、会議用スペースを使っているらしい少年たちの姿が目に入ってきた。
 三つ用意されている会議用スペースは一応、仕切りに囲まれているのだが、特にドアなどがあるわけではない。
 その中から見え隠れする制服の襟につけられた校章などを見るに、どうやら同じ一年生のようだった。
(…一年?文化部か?)
 しかし祐一は、自らのその考えをすぐに否定する。
 荷物などを見るに、運動部がよく発注している大型のバッグが有る。二つ有るところを見るに、少なくとも二人は運動部だ。
 視界を僅かに掠めるだけの状態なので、中の声や様子はあまり見えてこないが、少年たちの口元から知っている単語が入り交じっていることに気付く。

 おがた。ひらた。へいけ。いけもと。

 彼らも『持ち上がり組』なのか、或いは空手部でコーラス部の女子を送ろうという話に参加する者たちなのかもしれない。
 その辺りの真偽は判断しかねたが、取り敢えず祐一は先に図書館を出ることにした。
 送る側の準備が出来ているのだとすれば、もう待ち合わせ場所には誰かいるだろう。
 祐一は差し入れを手に、さっさと図書館を後にした。