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アインシュタイン・ハイツ 302号室 藤井祐一

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 海外メーカーのGPS携帯やスマートフォンを幾つか持っているが、基本的に『昔の仕事相手との連絡用』で、日本メーカーの携帯電話は持っていなかった。
 元々、『IT界のガラパゴス』とさえ評される日本の携帯は、優秀では有るが些か祐一の手には余る。
「そうなんだ。ウチの学校、授業中だけサイレントにしていれば所持そのものは禁止じゃないから、藤井くんも持ってると思ってたよ。……ちょっと待ってね」
 平家が、大沢教諭のデスクから、先程平家の母親の電話番号をメモするのに使っていたメモ帳とペンを拝借すると、自分の携帯電話を取り出して電話番号とメールアドレスを確認して、記入する。
「はい、じゃぁ、これ」
「あぁ。登録したら一回電話する。練習中だろうから、ワンコールで切って、確認にメールを入れるから」
「うん。宜しくね」
 祐一は手渡された紙を生徒手帳に収めて、他に忘れていそうなことがないか考える。
 やがて、思いついたのは、たった一つだった。
「……そうだ」
「ん、どうかした?」
「彼氏が出来たら言ってくれ。その時は『お役御免』でいいと思うんだが」
「………プッ」
 平家が一旦目を丸くして、それから首を傾げた後、吹き出す。
 『何かおかしなことを言っただろうか』と、自らの言葉を顧みて、祐一は眉を顰めた。
 平家の性格と器量なら、男子に告白されることは少なからず有ったのではないかと思うのだが。
「藤井くんも、彼女が出来たら言ってね。その時は誰か、別の人に頼むから」
 こうして、平家との奇妙な生活は始まりを告げた。