死人
僕はまたアパートの方へと戻った。
そして、階段を登ろうとして足を止めた。
こんな状態で姉を背後に居させて良いのだろうかと思った。
そういうのは、なんだか落ち着かない。
「先に登りなよ」
姉はちょっとの間何も言わずにこちらを見ていたが、すぐに階段を登りはじめた。
姉の後ろについて階段を登りながら、僕はぼんやりと考えていた。
末西君は姉と対面してどんな顔をするだろうか、と。僕も居ることだし、何も起こらないだろうとは思う。
むしろ、実際に姉に会ったことのない末西君にしてみれば、僕が嘘をついているわけではないと分かって良いかもしれない。
「奥から二つ目の部屋だよ」
無言で歩いていく。
たしかに姉の言うとおり、他の部屋は窓ガラスが割れていたりして、人の住んでいる風ではなかった。