死人
沈黙。
しばらくすると彼が
「通夜とか葬式とかは、まだいいのか?」と言った。
何で僕が葬式に行くんだと、反射的に聞き返した。本当に何故そんな話になるのかわからなかったからだった。
「どんな事情かは知らないけど、それでも姉弟なんだから、葬式にも出ないのは可哀想じゃないのか」
突然何の話かと思えば、それは姉の話だった。しかも死んだことになっている。姉は生きている。今日も顔を合わせた。
どういう誤解をしているのかは知らないけれど、突然死んでもいない姉を死んだことにされるのは、あまり気分の良いものではない。
いきなり葬式はどうしたなんて言い出したかと思えば、死んだのはお前の姉だなんて滅茶苦茶な話の連続に、僕は少し苛立っていた。
「葬式も何も、そもそも死んでないよ」