死人
「蒼汰じゃん。なんでそんな所に突っ立ってんの?」
普通に姉だった。
まあ、それはそうなのだ。姉は、恐らく僕が事故のことを知っているとは思っていない。
昨日まで何事も無く姉と過ごしてきたのだから、姉にしてみれば態度を変える理由はなにもないだろう。
変わったのは僕だった。
「友達の家に行ってた帰りだよ」
大事なのは、僕がいつも通りに振る舞うことだ。
そのうちばれてしまうかも知れない。
どうなってしまうのだろう。
どうもならないかも知れない。
「あんたもコンビニ寄る?」
「宿題残ってるからやめとく」
じゃあまた後で、と姉は僕に背を向けて、コンビニに入っていった。