ウォーズ•オブ•ヘヴン 01-2
…理由だと??
俺は、校長先生から、打ち解けてから殺せと伝えられた。理由は聞いてはいない。
「……んなら、教えるんだ。あんたがなんで知ってるかなんて知らなくていい。だが、理由を教えろ。俺に歯向かうというのなら、無理矢理でも聞き出すがどうだ…!」
久々にブチギレたかも知れない。もとから顔にも態度にも感情が現れにくいが、今回ばかりは本気でキレた。
気付けば自分の一人称も俺へと変化していた。
よく考えれば、今病院にいるのも校長のせいだ。こんなことに巻き込まれてさえいなければ、斬られなくても。葛藤しなくても。殺さなくても済んだのに!
「まあまあ、待ちなよ白鷹。怪我もあるのに勝ち目無いだろう?それにまだババ抜き終わってなかったら玲慈も怪しむだろう?引いたらどうだ…?」
こういう時に話を逸らすのは上手いな…。
確かにここで剣を交えれば大きな騒ぎになってしまう。腹は立ったが今は抑えよう。
無言でイライラしながら亜夏のカードを思い切り奪った。
「あんた、最悪の運命の中で生きてるよ、誰も助けず、殺すために友情を作られ、最後は自分で終わらせる。たったそれだけの最悪の運命。でも、全ての理由は自分にある。この状況を作ったのも、原因はあんただ。遊ばれてたんだ。トランプの様にね。あんたが自分で引いたのは、その自分を苦しめる“ジョーカー”だったのさ。」
俺はジョーカーを引いた。
どこから僕の人生狂ってしまったのだろうか?
…ああ、そうだ。
あの日、天界に来て以来ずっと力を求めて精を出して頑張ってきた。いや、頑張っていれば報われるんだと思っていた。
…たった1つの小さな命を救うために。
その考えが人格を、人生を、運命を曲げてしまったのかもしれない。
「ちょっと考え方が変わったよ…。」
僕の一言で亜夏は首を傾げた。
少しだが顔に笑みが出てしまったらしい。
ガラッ……
玲慈が扉を開けて現れた。
「おっ、どっちが勝ったんだ?」
亜夏は私の勝ちだよと言う。
…僕はそんな言葉を聞かずに立ち上がり、玲慈の前に出た。
「どーしたんだ?ツバキ?」
その時僕は少し頭のネジが緩んでいたのかもしれない。
しかし、迷わず、僕は言い放つ。
「…僕は、君を殺しにきた!」
っっ……。
空気が静寂と緊迫に包まれた。
ピリピリとした殺気と気迫が3人に走っていった。
亜夏も唖然としている。
とうの本人、玲慈はというととぼけた表情だ。
僕はまだ続ける。
「君は、僕のライバルだ。これはこの先も変わらないし、君よりも努力し続ける。どちらかが死ぬまで永遠に。…だから、僕の手で…君を殺す!!」
ライバルとして殺すこと。
本来自分が伝えたい真実とは少し曲がった言葉。
自分でも何を言ってるのかさっぱりわからなかった。
「ああ、今度戦う時はもっと強くなるぜ!」
それでも、玲慈は変わらなかった。
いつもなぜか笑顔で、本気で、無邪気で、強くて、優しくて、そしてバカな玲慈。
自分にその要素があるか?
…いや、足りない。
人間として、剣士として、天使として自分は玲慈より弱いんだ。
だから、そうだな。俺も強くならなきゃ。
最低でも、最悪でもいい。
だから、たとえ報われなくても。
信じた友情は、突き通さなきゃ。
「勝負は、またそのうちしよう……。」
殺すことを決意した友情なんて友情じゃないとか、曲がってるとか、正直自分でも思う。
でも、自分で殺すということはそれまで自分が守るということだ。
だから、この言葉を伝えたくなった。
出会えて良かったから。
志を同じくする者だから。
最高のライバルだから。
『ありがとう』の言葉を。
でも、伝えられなかった。
……これは、玲慈を守ることでしか伝えられないから。
たとえ最悪の運命(ジョーカー)だとしても。
……その決意に、少女は笑顔だった。
その純潔な笑みの奥……。
「やっと、動き出すか。」
『遅かったな……。』
さあ、始めようか。
………この計画。
【聖還の創翼】(プロジェクト•リバイバルウイング)を。
作品名:ウォーズ•オブ•ヘヴン 01-2 作家名:冬葉一途