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ウォーズ•オブ•ヘヴン 01-2

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決意の代償

 俺は、何かに追われている。
 暗闇の支配する空間。
 空気も悪く、息が苦しい。
 微々たる光が漏れている方向へ向かって、一歩ずつ進んで行く。
 ああ。足が重い。
 この背中に、白い大きな翼があったのなら。
 あの光差す場所にすぐたどり着くというのに。
 コツン…コツン……。
 追っ手の足音か?均等な感覚で鳴り響く音。
 『おい…君…?』
 どこからだろうか。声が聞こえる。
 『聞こえているだろう?返事をするんだ!』
 小さく、消え入りそうなか細い声で囁いてくる。
 『こっちへ来るんだ…。助けてあげよう。』
 なんなんだ一体!!
 『さあ、こっちだ!』
 やめてくれ…やめてくれ!
 『こっちに来るんだ!』
 やめろ…!
 『さあ、あと一歩だけ踏み出して、俺のところに来い!!!』
 
orange in…
 「やぁめろおおぉぉぉぉ!!!」
 「うるせぇぇぇぇ!!!!」
 ガシャーーン!!
 あまりの音にベットから跳ね起きる。
 「…なんだ??」
 ……ってあれ?ベッド??
 「なんだじゃない!うるさいって言ってるだろう!!!」
 右を見ると、病院のベットの上に座り、読書をする白髪の少年がいた。
 理由はわからないが、拳を強く握りしめている。
 どうやら、声の主はこいつらしい。
 「え、どちら様で?」
 「どちら様って……。もう忘れたのか…失望したよ橙田玲慈くん……。」
 ええっと……誰だ?
 あれ、この喋り方は……。
 「あああぁぁぁぁぁぁぁー!!」
 「だからうるせぇぇぇ!」
 やっと思い出した!
 「お前は!えーと、校庭で戦ったやつ!眩しいレイピアの!」
 「翼揮だよ!白鷹翼揮!!」
 ってか、なんでこいつが俺の隣に??
 「お前、病院なんかでどうしたんだよ??」
 「はぁ……。ほんっっとに何にも覚えちゃいないんだね…。あの戦いで、君が僕の横腹切ったんだろう……。」
 「えっ、んじゃ、えっっ?!」
 だめだ。まーっしろ。
 「わかんないんだろ?君、自分の傷も気にした方がいいぞ。あんまり叫んでばっかりいると傷口開くからな。」
 「傷口??」
 傷口なんてどこにもないと思うけど…??
 探す為に胴体を軽くひねって背中を見ようとする。
 …いうまでもなく、切られたのは横腹だったわけで、
 「いってぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
 病院中に響き渡る爆音で叫んだ。玲慈本人も驚いたほどの声で。
 「まったく…君は何も考えないで行動するから…。」
 「いてぇ、いてぇよマジで!何だこの傷はよぉ!!」
 「……僕がやったよ…。」
 めちゃくちゃ冷静に答えられて、訳がわからなくなった。
 「ん?お前の傷は俺がやって、おれのきずはおまえがやったのか?」
 「……思い出せないならいいよもう…。」
 翼揮は少しだが玲慈を気にしていた。思ったより真剣に考え込んでいるようだ。座り込んで額に手を当てるという、まあわかりやすいポーズで固まっている。
 しかし…なぜこんなに心を開けるのだろうか。
 突然襲いかかってきた相手。
 そんな奴を相手に普通に話していられるのは、どうしてなのだろうか。
 気にしても仕方ないのはわかっている。
 馬鹿なだけなのかもしれない。
 でも、翼揮もそんな玲慈をいいやつだって思っている。
 …まだ実力で認めた訳ではないが。
 そんなことを考えていると、玲慈が突然声を出す。
 「うっわーー!すっげぇ!」
 彼の目線の先にあったのは窓の外だった。
 「見ろよツバキ!!外!ここめちゃくちゃ高い!」
 …いいやつ……なんだと思う。
 「…それはいいけど、考え事はどうした。」
 「え?なんかあったっけ?」
 ……こいつ…意外と天然なのか??
 馬鹿みたいな質問を散々されることになるだろうから突き詰めないでおこう。
 そう、何でもいいや。
 白鷹は気分転換に、
 「…ちょっと僕は売店でも見てくるよ。」
 と、何気なく言ってみる。すると、
 「あ、んなら待ってくれね?」
 と言って、カバンの中を探す玲慈。
 その中から財布を探し出して、小銭を握りしめてい僕の方に突き出した。
 「これで、俺の為にジュース買ってこい!」
 ……へ?
 「何で僕に買わせようとするんだっ!」
 「いーじゃん。行くんだろ、売店。」
 ま、まあそうだけど…。
 「なんで命令口調なんだ…。悪いけど僕は断らせてもらうよ。」
 「はぁーーー??!なんでそーなんだよ!!いーじゃねーか!!!」
 「自分で行ったらいいじゃないか!」
 うんー。と玲慈は考えるそぶりをみせる。
 すると、ようやく口を開いてこう言った。
 「……んわかった!んなら俺もついてく!」

 売店にて…
 ……お会計、1300Pになりまーす。
 全く、どうしてこうなった。
 翼揮はひとり唸っていた。
 「サンキュー!俺先もらうぜー!」
 と言って、玲慈は買ったばかりのコーラを持っていく。
 プシュッと爽やかな音を立てて蓋を開けた。
 「うおー!コーラやっぱうまいねぇ!!」
 「…美味いのはわかったから、やっぱなんでこんな物買ったんだ?!!!」
 と言って翼揮は袋の中に入った小さな黒い箱を玲慈に突きつける。
 「こんな物に1000Pもかけた意味がわからん!返せ俺の1000P!」
 やっぱり、この1000Pは惜しかった。
 説明が遅れたが、天界では通過統一の為、P(ピー)、ポイント制になっている。1P一円で考えてもらったらいいだろう。
 しかし…。
 こうなったのにはちょっとした理由がある。
 時間は少し前へさかのぼる。

 チーン。
 エレベーターの扉が開いた。
 未だにこんな変な音の鳴るエレベーターがあるのかレトロか。と思った。
 売店に行くときは必ずこのエレベーターを使う。いつも通り。
 だが、いつもと違うことが一つだけ。
 「なあ、売店で何買うんだよ。」
 そう。橙田玲慈。
 ジュースの論争になって、あの後本当にこいつはついてきたのである。
 このせいで気分転換という目的はなくなってしまった訳だ。
 自分は傷が痛むから、少しでも緩和できたら、と杖をついている。だが。
 「君はよくなんの支えもなしに平然と立っていられるね?」
 こいつ、何も持ってきてない。
 まさかの手ぶらだ。
 「うーん。まあ、痛くてもこれくらいなら大丈夫なんじゃね?」
 同じような怪我をしていながらこの差はなんだ。と思ったが、気にしても仕方がないので特に触れないことにした。
 チーン。
 また、エレベーターのひらく音。売店はその目の前だ。
 玲慈は目を輝かせて、
 「おおー。病院の売店にしてはハイクオリティじゃん!」
 大規模な病院だからか天界だからかは知らないが、売店は並のコンビニよりは広く品揃えがある。
 「まあ、君はジュース買いにきただけでしょ。すぐに選びなよ。」
 「はいはーい。」
 玲慈と隣同士でジュースを眺める。玲慈は即答で、俺コーラねー。と言ってそれを取る。
 自分もしばし悩んで、
 「まあ、ミルクティーでも飲むか。」
 と、冷たいペットボトルを持った。
 さあ、そんなら行くぞ、と言って横をみようとする。
 が。
 …いない。
 そいつは忽然と姿を消した。