小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

八峰零時のハジマリ物語 【第一章 005】

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 

  【005】


《コホン……では質問を受け付けまーす。質問のある方……》
「あるに決まってんだろっ!」

 と、俺は上段蹴りをお見舞いした……が、さっきと同じようにシッダールタは目の前から消え、俺の背後から、
《まったく。君は相変わらず学習しないね~、零時くん》
 と、腕を組み、笑みを浮かべながら立ち呟いた。
 すぐさま、俺は、後ろに振り向きつつ、回し蹴りを放った……がやはり当たらず、シッダールタはギリギリのところでよけた。
 だが、俺はそれだけに終わらず、連続で蹴りやパンチを繰り出しながらシッダールタに質問をぶつける。
「まずは……当時の……『通り魔』が俺を……壁に叩きつけ……た後の……俺の目の前に立ってからのことを……教えやがれ!」
 シッダールタは、俺の連続攻撃をギリギリのところで(でも余裕綽々で)かわしつつ呟く。
《君は、あのとき、『通り魔』である、『悪魔』によって、心臓を一突きされ、即死、した》

「!?」

 俺は、攻撃の手を止めた。
「……えっ?」
《だ・か・ら~、あの時、零時くん、君はあの『悪魔』によって心臓を抉り取られたんだよ》
「…………えっ?」
《いやマジでマジで。自分の胸を見てみてよ。ここは君の潜在意識の世界で、零時くんは今、『身体を持ったイメージで固定されている』……だから普段どおりに胸を見る感じでみてごらん、跡が残ってるだろ?》
 俺は自分の胸を確認した。
 そこには、「手術跡」ではなく、やけどが治ったような「ミミズ腫れ」をした跡が残っていた。
「あっ……」
《……ね》
「俺は……本当に……」
《うん。君は一度死んだんだよ。そしてワタシが生き返らせた。君が『契約』を交わしてくれたから、ね》
「お前の手伝いをするってやつ、か?」
《そう。でもそれだけじゃない。君のその身体はワタシが力を回復させた後、ワタシの《器》として使わせてもらうということも君は了承した》
「……う、器?」
 俺は観念して座り込んだ。
「わかった……わかったよ。もう降参だ。だからイチから説明してくれねーか?」
《わお! ありがとう、零時くん。助かるよ》
 そう言うと、シッダールタも俺の向かいに座り込んだ。
 少し……いや、もの凄くウザいが、今の状況をもう受け入れないといけない……俺はそう思い、覚悟した。

《ワタシの名はシッダールタ……天界の救世主(メシア)と呼ばれている者。今、天界は魔界の反乱により危機的状況にある。ワタシはこのような『天界の危機的状況』が訪れたときに現れる存在なのだ》
「て……天界? てことはお前は……神様?」
《まあ、そんな感じ。お前たち人間が言うところの名称で言うならね~》
「マ、マジかよ。お前みたいな『軽薄男』が……すごいショック」
《零時、ひどいね》
「でもよー、だったら何でココにいんの? 天界でその『魔界』の……『悪魔』だっけ?」
《そうだ》
「その悪魔たちの反乱をすぐにでも止めに行くべきじゃないのか?」
《だーかーらー、それを今から説明するの。ちょっとは人の話を聞きなっさーい》
「んだよ……ブツブツ」
――拗ねた。

《ワタシは本来なら零時の言うとおり、魔界の悪魔たちを一掃するための存在。だから、こんな『人間界』にいることはない。だが……》
 ここで、シッダールタは少し、苦い顔をし、間をおいた。
「……?」
《……だが、ワタシは悪魔たちの策略により、力が『不完全』のまま出てきてしまうという事態に陥った》
「力が……不完全?」
《ワタシは元々このような人の姿ではなく、天界にある『創世の大樹』という巨木の中で『救世の実』という『種子』の状態で天界全体を監視している……それが本来のワタシだ》
「『創世の大樹』……?『救世の実』……? 要するにお前は『木の実』みたいなヤツで、普段は『創世の大樹』っていう木の中にいるってこと?」
《もう少し言い方が無かったのかな?……まあ、間違ってはいない。そして、本来のワタシである『救世の実』というのは、天界にて『危機的状況を招く恐れ』が起きたときに『創世の大樹』から外に実をつけて出てくる》
「ふーん、じゃあ今回も天界で『危機的状況を招く恐れ』が起きたから、お前が出てきたってことか」
《半分『正解』だが、半分は『間違い』だ》
「えっ?」
《ワタシは……『魔界の策略』により、強制的に顕現することになってしまった》
「強制的?」
《ああ。『創世の大樹』は通常、天界の『王の間』の最奥にあり、そこには二人の『神官』が扉の前で守護している》
《そして、その『神官』たちは『創世の大樹』を守護する役割と、『創世の大樹』の変化……つまり、『救世の実』であるワタシが『創世の大樹』に実をつけ始めることを確認すると、『天界の王』や『大神官』らに報告を行うという任務を負っている》
「うーん。つまり『警備員』みたいなもんか?」
《相変わらず言葉選ばないヤツだね、君は……まあ、間違ってはいない。とまあ、これが本来の天界の正常運転時だが、今回、その『創世の大樹』を守護していた『神官』の一人が、天界の者を……裏切った》
「えっ!?」
《そいつは、『創世の大樹』を守護するもう一人の『神官』を抹殺。そして自身の『影』を死んだ『神官』のかわりに置き、天界の者を騙し続けた》
「『神様』が裏切るなんてことあるのかよ」
《『神官』は、お前らの言葉で言うところの『天使』であり『神様』ではない。『神様』はワタシか、もしくは『天界の女王 アマテラス』のことを指す》
「え~~~~、お前~?」
《お前失礼だぞ。ワタシはこう見えても天界では『絶大な存在』であり、天使たち……特に女性の天使からは『アイドル扱い』されるくらいなんだぞ!》
『えっへん!』とでも言うように大きく胸を張った。
《人間界で言うところの『キムタク』みたいなもんだ》
 こいつ、若干古いよな~。まあ、言っていることはわかるけど。
「それで? お前はどうなったの?」
《ワタシはこの『天使を裏切った神官』……ちなみにこういった『裏切りの行為をした天使』は『堕天使』と呼ばれるのだが、その『堕天使』により『強制的』に『創世の大樹』から実を引き剥がされてしまった。おかげでワタシは『完熟する前の不完全な力の状態』となって顕現してしまった》
「どうしてそんなことを、その神官……『堕天使』は、やったんだ?」
《本来であれば、『天界の危機的状況』が増していくにつれワタシの力も増していく。理由は、天使らでは対応が難しくなるという状況が起きたときの存在であるからだ》
《そして、その危機的状況が『飽和点』に達したとき『完熟』……つまり『完全体』としてワタシは顕現するというのが本来の流れだ》
《しかし、今回、悪魔たちの最大の目的は『天界の侵略』の前の邪魔者となる『ワタシの抹殺』だったのだ》
「まあお前、ウザいからな~」
《あ、そういうことじゃないし、今はそういうのはいらないよ、零時くん》
「抹殺? つまり、お前を殺そうとしたってこと?」
《そうだ。奴らはワタシを『不完全な状態のまま顕現させ殺す』というのが本当の狙いだった》
「マジかよ……。あれ? でもお前がここにいるってことは……?」