怠慢探偵(1/4)
勝手に退場しようとする氷室に田中が食って掛かる。確かに氷室の功績は大きいとはいえ横暴ではないか。よく問いかけた。いいぞ田中。
そんな田中の問いかけに氷室は一瞬きょとんとした表情を浮かべ、言ってなかったかしらと口端を軽く吊り上げて言った。
「文面考えるのはともかく、私は重度の猫アレルギーなの。猫に近寄ることすらできないから」
……こいつ、初っから俺たちに丸投げするつもりだったのか。
どうやら俺たちは氷の女帝に踊らされていただけらしい。これからのあわただしい日常を思い浮かべて深い深いため息をつかずにはいられなかった。
……すっかり日の暮れた十月の空。疲れ切った体を引きずりつつ家に帰るや否やベッドに倒れこむ俺。
横になることで少し和らぐ疲労感と共に、心の内側からふつふつと欲求が湧きあがる。
……俺はヒーローになる。なってやる。誰しもがガキの頃に考えるような欲求を抱えつつ、部屋の片隅におかれた少し大きな動物用の鉄製ゲージに目をやった。
第二章へ続く