桜
「ふぅ・・着いた・・・ここが新潟か、案外綺麗なとこだな」
彼はバスから荷物を下ろし、道沿いに沿って歩いて行く。
運良く彼が捜していた桜はバス停のすぐ近くにあった。
――俺が死んだら桜はもう見ることができないもんな。春はそう思い桜の幹の所に軽く触れる。
「おい!その桜に触るな!」
そう言ったのはまだ小学3年くらいの丸坊主の子だった。
春は一瞬目を丸くしたが
「すまなかったね。坊や」
とお辞儀をした。
「いいんだよ。わかれば」
とその子はちょっと照れくさそうに言う。
「悪いことしちゃったね。じゃあ僕はもう行くよ。じゃあね」
「じゃあねおじさん!」
――あれ?僕ってそんな老けて見えるのかな?まだ29なのに・・・
そんなくだらない考えとともに春はまた歩き始める。が特に行先はない
らしいので振り返ってみるとさっきの子が悪ガキ達にいじめられていた。