川辺の姿
あたりを見回していると外はすでに暗くなろうとした。彼が羨ましそうに見えたあの大学生の集団もすでに引き払っていた。時刻は17時。この季節でこの時間の割には外が暗く感じた。それから数分もたたぬうちに雨が降り始めた。そして、それは土砂降りの雨となりスコールとなっていった。
このままじゃ帰れない。彼はため息交じりにそう思った。
ぶっきらぼうな女が、彼が起き上ったことに気がついた。
「あ〜、やっと起きたんですね。ずっと寝てたから起こすのも悪いんじゃないかと思ってまして。」
女が安心したように彼に話しかけてくれた。この女は彼にとって愛想の良い女ではなかったが、この時ばかりは少し心配してくれたので何だかうれしいような気持ちになった。
「雨がやむまでここにいたらどうです。」
そう言われると、雨が降っていなくともこの小屋にいたいと思った。
「すみません、コーヒーをひとつ。」
女は少しばかり微笑み、彼の注文を承った。
「それと、僕も水タバコを吸いたいのですが、よろしいでしょうか。」
彼は少しばかり、あの夢の余韻に浸っていたいと思った。このぶっきらぼうな女と夢の世界の雰囲気を共有したいと思った。雨はまだ続いていた。