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最終電車

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やっと駅に着いた。
PASMOで改札を抜け、ホームに向かう階段を駆け下りる。階段の途中にある踊り場から身を乗り出してホームを見下ろすと、既に電車が停まっているのが見えた。
「やばいっ!!」
俺は思わず声を上げると、2段飛ばしに階段を駆け下りた。
ホームに降り立つと、そのまますぐそばのドアから車内に飛び込む。文字通り、「駆け込み乗車」だった。
俺が車内の床に見事に着地した瞬間、電車のドアがぴしゃりと閉まった。
―― うわー、ホントにぎりぎりだった。でも、やったぜ!
俺は心の中でガッツポーズを決めると、改めて電車の中を見回した。
そこで俺は愕然とした。
最終電車に乗るのは初めてではないし、いつも通りなら満員に近いはずの車内は、自分以外誰も乗っていなかった。
「えっ、えっ、なんで!?」
俺は思わず大声を出してしまった。
前後の車両を見ても、誰も乗っていない。俺は座席の横のバーを握りしめたまま、茫然となった。
 ―― こんなことがあるはずがない。最終電車だって言うのに、自分以外誰一人乗っていないなんて・・・
俺は途方に暮れて、とりあえず目の前のシートに腰を下ろした。
そういえば、さっきから駅に停まらない。
 ―― やっぱりおかしい。最終電車は各駅停車のはずなのに、ぜんぜん駅に停まらない。
俺はふと、昔読んだホラー小説を思い出した。それは、
何気なく乗った電車が死後の世界に行く電車で、乗客は全員が死者だった。自分も、自分で気づいていないだけで、実は既に死んでいた。
というストーリーだった。
俺は、真っ黒な車窓に映った自分の顔をまじまじと見つめた。
 ―― ひょっとしたら、俺はもう死んでいて、この電車で死後の世界に行くところなのか?
窓の外の景色は真っ暗で、いつもぼんやりと見ている景色なのかどうか、判別できなかった。
 ―― 実は、今見ているのは、もう死後の世界の景色なのかも知れない・・・
俺はそう考えて、慌てて自分の考えを否定した。
 ―― いや、そんなばかなことはない。俺は生きてる!!
窓を大きく開けて、体を乗り出して前方を見てみると、何か真っ黒な大きな建物が見えた。電車は、その建物に向かって走っているようだった。
突然、車内の灯りが消えた。
俺は真っ暗になった車内で、パニックを起こしそうになりながら、シートの上で体を縮こまらせて茫然とするだけだった。
やがて、電車は速度を落とし始めた。そうしてゆっくりと、真っ黒な建物の中に吸い込まれて行く。
作品名:最終電車 作家名:sirius2014