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最終電車 2

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 どうして僕がそんなに日常を毛嫌いするのか。その日常はどんなものだったのか。地獄と比較して、天国と比較して、どっちが辛いものなのか。
「本当は分かっているのでしょう。自分が死のうと考えたまでの経緯を。あなたは分からないのではありません。分かりたくないのです」
 だったら、君が、教えてよ。
「甘えるな。甘えて何になる。私があなたの日常と称される過去を言うと思うのですか。自分で考えなさい。自分で思い出しなさい。自分で向き合おうとしなさい」
 嫌だ。嫌だよ。あんな過去は思い出したくないんだよ。僕にとっては今しかないんだ。今が未来を決めるんだ。
「何を言いますか。未来を決めるのが今でも、今を決めるのはあなたなのです。私は、今のあなたの行動によって為すべきことが変わってくるだけなのです」
 酷い人だなぁ。
「なんと言われても構いません」
 僕がこのまま思い出せなかったら……思い出さなかったら、どうなるの?
「それでも、日常に戻っていただくだけですね」
 何だ、変わらないじゃないか。だったら思い出さない方がいいよね。
「思い出すが身のためです。行き先は同じでも、今の行動によって、未来のあなたの行動が変わるでしょう」
 怖いなぁ。思い出すのは怖いなぁ。自分が忘れていた何かがまた戻ってくることは、怖いよ。
「当たり前です。ですが恐怖なしでは、忘れたものを思い出すことも、未来を切り出すこともできません」
 こんな怖い思いをするのは僕だけなの? 君は?
「私は何も思い出しはしません。あなたの過去も分かっています。あなた一人ですべきことなのですよ、これは」
 怖いのは、やっぱり嫌だなぁ。
「何に怯えているのです。その日常が恐ろしいものだったとしても、過去は変えることはできません。ですが未来は違います。同じ日常でもそれが未来のものならば、変えることができるのです」
 本当に、やらなければいけないこと?
「はい。未来を変えるのは、私ではなく、あなたなのですから」
 
そう。じゃあ、頑張ってみよう、かな。
作品名:最終電車 2 作家名:悠木陽和