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和尚さんの法話 『 世間と出世間 』

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その黙っているということが、実際は雷の如くに答えてる
んだということですね。
だから、ああだこうだ、ああだこうだと文殊が説明するけ
ど、黙っている維摩のほうが一枚上なんだと。空というこ
とを本当に現わしてるんだと。
出世間の道というのは、永遠の道なんだということを申し
たいわけです。
その永遠の道を求めなければ、何時まで経っても、世間へ
生まれてこなければならないんだということです。
彼岸へ到達することは出来ないのです。
兎に角、この世が全てなら、このお話しも要りませんよね。
あの世へ行ったら、この世間のことはちっとも通用しない
そうですよ。
せいぜいあの世で通用するのは、道徳ですね。善い行いで
すね。

仏教の中でも勿論、善い行いということは勧めていますけ
れども、善い行いだけでは、解脱は出来ません。
あの世の良い処へは行けますよね。
然しそれは三界の中ですからね。
この世の損得というのも、あの世では通用しませんね。
得な方へ得な方へとまわるほど、出世間では損をしている
のですから。
損の方へまわるほうがいいわけですよ。
それは相手に利益を与えて、自分が功徳を積んだというこ
とになりますからね。
その損の方へ廻った為に、死ぬという人もありますが、そ
こまで行かなくても、損をして自分が困るということもな
いのであれば、損をして相手に得を与えたほうがいいです
ね。

それはあの世へ行ったらそれが得となって返って来るので
すから。
だから功徳という得の貯金をしてると思えばいいですね。
だからこの世で得ばかりした人と、損ばかりした人があの
世へ行ったら、逆になるというわけです。
だから本当の仏教というのは、死後の世界というのを認め
て、永遠ということを認めてからの話ですからね。