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リンドウノミチヤ
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novelistID. 46892
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KYRIE Ⅲ  ~儚く美しい聖なる時代~

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 男の娘が父親の死の知らせを聞いたのはNYに滞在中の事だった。
 彼女が最初に父の死を確認した。

 男は67歳になっていた。中米の街、白い壁で覆われた通りの安宿の二階で、彼は息絶えていた。
 死因は今もって不明である。




 男の横たわっていたベッドの枕の下には古びた小さな十字架が置かれており、宿の善良な娘によって遺族の許に届けられた。
 それは遠い昔、あのピアニストの父親が故国を去る時に気まぐれに家から持ち出した十字架で、数十年後ささやかな偶然を経てその孫娘の手に渡っていた物だった。

 亡き公爵夫人の棺に夫が入れた筈のその十字架の事は子供達は知らず、彼等は、生涯信仰を持たなかった父親が何故そんな物を身に付けていたのか不思議に思ったのだった。







         ~儚く美しい聖なる時代の物語~   完