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リンドウノミチヤ
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novelistID. 46892
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KYRIE Ⅲ  ~儚く美しい聖なる時代~

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 史緒音は父の故郷で双子の男女を出産し、やがて刑期を終えた桐永統也と再婚した。

 一族の別宅の跡地に居をかまえ、ガーデニングや家事にいそしんでいる夫人の姿は、かつての雪の女王を知る者達にとっては信じがたい光景だっただろう。当の本人はと言えば、絶対君主としての手腕をいかんなく発揮した後に思いがけずやって来た家庭的な暮らしにいささか戸惑っていた様だった。

「私の柄じゃないわよ」

 家族写真を撮っておこうと思い付いた夫に根気強く説得され、子供達や夫と共にやっとカメラの前におさまった彼女は、かの公爵夫人は営業スマイルは得意でも写真は苦手だったのかとからかわれ少し照れた様につぶやいたものだ。



 ある秋の日、庭の薔薇がその季節を終えようとする午後、史緒音は突然倒れて病院に搬送され、その日の内に息をひきとった。
 一度だけ夫の声に微かに指を動かしたが、それきりだった。


 死因は脳出血と診断された。



 それはまるで偶然地上に降りた天使が人間の男と結ばれた途端、何の前触れもなく去って行った様だったと、後に統也は子供達に語った。