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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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切り戻し

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夏休みになり、白いチュウリップと言うサークルが企画したデズニーランドに行くことにした。この白いチュウリップは片親だけで子を持つ親の会なのである。会の趣意書には記載されてはいないが、会長いわく「チュとリップを単純に考えてください。婚活の場でもあります。白の意味する所は自分は未婚者だと思うためです」
 バスに乗ると座った席の前列に、川田先生が男の子を連れて座った。川田先生は広瀬には気づいていないようである。広瀬は挨拶をしようと思ったがバスが発車した。すると添乗員がこまごまとした事を話しだした。挨拶する事が出来なかった。トイレ休憩になればと思い、そのまま目を瞑った。
 広瀬は再婚の事を考えていた。やがてバスは予定の時間にサービスエリアに停まった。広瀬は川田先生の後を追い、挨拶をした。真理は単純に
「先生一緒になるなんて神様のお引合わせよね」
等と言って嬉しがった。
バスに戻ると大人と子供は席を換えた。川田先生の子は身長が真理よりはるかに大きく学年は上だろうと想像できた。
川田先生は40歳。子は祐二君等が話しのなかで解った。広瀬は真理の担任教師から一人の女性と考え始めた。
 園内に入ると夏休みとあってどの乗り物も長い列が出来ていた。比較的空いているものは子供たちは乗りたくないと言う。時間待ちの間に広瀬は川田先生の事を沢山知る事が出来た。立っていると広瀬の肩の当たりの身長で、運動靴なので160センチ前後に思われた。家庭訪問の時とは別人の様な、顔の表情から声までが柔らかに感じた。ロングの黒い髪を時々手で掴み風を入れる仕草をするときの首筋の肌はとても白く感じた。
 1時間ほど待ちようやく目的の乗り物に乗れた。水しぶきが飛び跳ねると一斉に歓声が沸く。大人も子供も無い。待ち時間の長さと暑さもあって、その涼しさや一瞬の恐怖は興奮させられる。
 乗物から降りると4人とも雨のなかを歩いたように濡れていた。真理は祐二君にハンカチを渡していた。川田先生は広瀬にハンカチを「どうぞ」と渡したが広瀬は自分のハンカチを取り出した。
「交換しましょう」
川田先生が言った。
「広瀬さんおしゃれですね。ハンカチにイニシャルが入っている」
「先生のハンカチはいい匂いがします」
「それはきっと化粧の臭いよ」
広瀬にとっては紛れもなく女性を感じる匂いである。
そして時間は経ちバスに乗り、それぞれの自宅に帰って行ったが、広瀬はハンカチの臭いを思い出していた。




作品名:切り戻し 作家名:吉葉ひろし