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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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切り戻し

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 「今日からみんなと一緒に勉強することになったお友達です」
担任の川田芳江先生から真理が紹介された。
「久保真理です。お友達になってください」
と言って真理はぺこりとお辞儀をした。そして顔を上げながら、名字が間違っていることに気が付いた。言い直そうとした時にはすでに
「真理さん芸名ではなく本名を言って下さい」
「?」
真理は咄嗟のことで何を意味しているか解らなかった。
「久保真理さんはベリーダンスの時のお名前でしょう」
真理はやっと理解出来た。
「広瀬真理が本当の名前です。ごめんなさい」
 休み時間になると
「お前、芸能人なのか?」
と2,3人の男子が寄って来た。
「ただベリーダンスを習っているだけよ」
「先生は芸名って言ったじゃないか」
「それは・・・・ダンスの時だけに使う名前なの」
「変だな、そんなの」
「俺の友達は親が離婚したらさ、名字が変わったよ」
「私にはパパもママもいるから」
「泣きそうな顔だよ」
その時授業の始まりで川田先生が教室に入って来た。
男子は自分の席に戻った。
真理はほっとした。
でも算数の授業はただ休み時間にならないで欲しいと思うだけで、先生の言葉は理解できなかった。
今までに経験したことのない時間であった。
次の休み時間には何を聞かれるのだろう。そんなことばかりを考えていた。
 その日は真理が心配することは起こらなかった。
10日ほど過ぎたころ
「お前の家に遊びに行ってもいいだろう」
「いいわよ」
「今度の土曜日に行くから」
「来る時に電話して」
「するよ」
真理が承諾したのは、いやな男子だけではなく、席がすぐ前のかおるちゃんがいたからだった。
 真理は学校から帰るとそのことをおばぁちゃんに言った。
「もう仲の良いお友達が出来たのね。良かったこと」
と喜んでくれた。
 おばぁちゃんは土曜日に友達が遊びに来ると、沢山のお菓子を用意してくれた。
「お前の家はお金持ちだな、また来てもいいかな」
真理よりも背は低いのにかなり強引だ。
その男子は杉田と言った。例の離婚して名字が変わったと言った男子で有る。
真理はその言葉に怯えていた。

作品名:切り戻し 作家名:吉葉ひろし