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珈琲日和 その17

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「それにしても男冥利に尽きるじゃない? マスターは彼女をその目に見えない何かからちゃんと守ってあげないとね」
「そうですね。男冥利が尽きる前に最善を尽くしますよ」
「で、その後寝られたの?」
「いや。結局」
 僕が言いかけたところに、シゲさんが息せき切って入っていらっしゃいました。
「こんにちは。いらっしゃいませ。毎日暑くて参りますね」
 僕がそう言っておしぼりを手渡した瞬間、シゲさんは不安げに辺りをきょどきょどと見回すと声を低くして聞いてきました。その挙動不振さはさながら刑事に追われる犯人のような感じです。何度かビクッと後ろを振り返っています。
「・・・おいマスター、この店には・・・いないよな?」
「何がです? 僕とマリさんはいますけど。刑事はいませんよ」と半分笑いをこらえたまま答えました。
「だから、幽霊とか悪霊とかその手だよ。昨日、母ちゃんと一緒に見た映画がおっかないやつでよ。ホラ、呪いで蘇った悪霊共に襲われてとかってやつだ。それから怖くて一睡も出来やしねぇんだ。母ちゃんにはいい歳こいたおっさんにもなって馬鹿だねぇ、いい加減にしなとか怒られちまうし。ここが安全なら、ちょっとここで昼寝して行きたいんだ」
 蒸し暑いおやつ時の鬱蒼とした空気を切り裂くようにして、僕とマリさんの悲鳴ならぬ笑い声が店に響き渡ったのでした。
作品名:珈琲日和 その17 作家名:ぬゑ