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ひづきまよ
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novelistID. 47429
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サキコとおっさんの話4

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■本日も晴天なり。

 いつものコンビニ前、きゃあきゃあと華やかな格好をする三十代後半位の女性が数人、待ち合わせ中。おっさんはいつもの位置で喫煙中。ぼーっとしながら、勝手に聞こえてくる会話を耳にしていた。
「やぁ~ん久しぶりぃい!」
「あとミチエだけだね!女子会の予約はばっちり取ってるからぁ」
「今日の為に子供預けてきたから遅くなっても大丈夫ぅ!」
 女子会か・・・と煙を吐く。
 まあ女子だよな。女だし。
 彼女達は最後のメンバーが揃った後、きゃあきゃあ言いながらその場から去って行った。入れ替わりのようにスマホを片手にサキコがやってくる。
「おっさーん!」
「おう」
 吸殻入れに吸い終わったタバコを突っ込んだ。
 サキコはベンチに座って「あー!」と両手を上げて伸びる。
「なぁ」
「ん?」
「女子会って何話すの?」
 何突然・・・と彼女は目をぱちくりさせたが、すれ違った女達を不意に思い出した。あぁ、あれを見てそう思ったのかと。だが、女子会といっても具体的にどんな会話するのかは人それぞれだと思う。
「普通の会話じゃないの?さっきの人らはどうか知らないけど」
「彼氏とか旦那の事?」
「それもあるんじゃない?」
 おっさんは再度タバコを一本口に含んだ。
「やんねーの?」
「あ?」
「女子会」
 彼女はスマホをいじりだした。そして「女子会っつーか・・・」と話し出す。そして中に入っている写真をおっさんに見せた。
「これって女子会に入る?結構前の写真なんだけどぉ」
 突き出されたスマホを受け取り、おっさんはタバコを吸いながら写真に目を向けた。
 そして映し出されていた派手な格好をした奇抜な集団の画像に、つい本音が飛び出す。
「・・・サバト?何か謝肉祭でもしてんの?荒ぶる神に感謝でもすんの?」
「魔女扱いすんなよ」
 よく知ってんな・・・とおっさんは思った。
 再びスマホを受け取ったサキコ。次の画像に移動。ええっとね~、と言いながら。
「さっきの化粧した画像ね!んでこれすっぴんバージョン」
 そしてまたおっさん画像確認。そして無言。
「同じ位置でさぁ、がっつりメイクしたのとー、すっぴんバージョン写メったの」
「顔違うじゃねーか!!」
 何故か怒り出すおっさん。サキコはスマホを受け取り、「そんなもんじゃね?」と開き直るように答える。理想と現実は違うと思うよと。
「どうやってそんなに化けるんだよ!」
「いや~、みんな頑張ってメイクするんだよ。目とかさぁ、でっかくしたいじゃん」
「騙したな!!」
「何でおっさんが怒んの?おっさんの歴代の彼女とかすっぴん見てきただろ」
 そう言われれば。・・・彼は記憶の隅にあった思い出を引っ張り出そうとする。いや、でもなぁ。泊まりがけとかでも自分より早く起きてたりしてたんだよなぁ・・・とか何とか。
 気づいたらもう化粧とかしてたかもしれない。あまり記憶がない。
「何かがっかりするわ」
「え~、女に理想持つなよおっさん。どうせその辺で歩いてる可愛らしい女の子って感じの子もさぁ、家に帰って顔洗ったらノーブラにジャージ着てあぐらかいて、あー、ケツ痒い~ってボリボリしてるって。家に帰っても可愛らしいあたし★とかそうそう無いと思うよ!現実はそうだと思う!だってさー、疲れるじゃん」
 無邪気な笑顔をして、顔をちょっと傾けながらサキコは幻滅させる言葉を吐く。お前もそうなんだなとおっさんは嫌そうな顔をした。
 喉渇いたから何か買ってくるね!と彼女は立ち上がり、そのままコンビニへ。
 女って何なんだよとおっさんは悩む。
「たっだいまー!ちょっと暑いからぁー、炭酸買ってきた、炭酸!」
 よいしょ、とベンチに腰をかけ、さっそくペットボトルの蓋を開けた。
「うぅううんめー!」
 さっぱりとした味に、彼女は歓声を上げた。はぁ・・・とおっさんは溜息をつく。理想と現実のギャップに打ちのめされた彼は、「今日は帰るわ」とタバコを吸殻入れに捨てた。
 え、帰んの?早くね?とサキコは問う。
 お前のせいだよと言いたくなるのを抑えながら、おっさんはさっさと車に乗った。
「そーかー!おっさん、まったねー!」
 おっさんの異性に対してのイメージを崩し、幻滅させたサキコ(女)は、笑顔で彼を見送る。

 時刻は十九時近くを差していた。