Thin Ice
2 章 「憂鬱」
あの日省吾に誘われるまま、店で働き出した。
元々酒も女も嫌いじゃない。ゲームのような感覚で俺はそれなりに楽しんでいた。
売り上げの金額とかあんまり興味がないが、省吾に褒められるのが面白くて
気が付けば1年が過ぎようとしていた。
仕事も大学もそれなりに楽しんでやっているはずなのに、
最近妙に感じる違和感?疎外感?
言葉にするのは難しいが、イライラする。
そんなある日、最後の客を送って店に戻ると省吾しか店にいなかった。
「お疲れっす。あれ?もうみんな帰ったんですか?」
「おお、お疲れ。明日から連休だろ。とっとと奴等帰った。」
久し振りに省吾の無防備な笑顔を見た。
そうだ、明日から3日間店は休みだ。
「休みなのに憂鬱そうだな?」
「え?そんな風に見えますか?」
「明日は学校も休みだろ?俺の部屋で飲まないか?」
今まで省吾に誘われた事が無かったし、あの日以来個人的な話すらした覚えがない。
驚いて省吾を見ると
「お前最近何か変だぞ。まあそう言う時は飲め!俺の部屋なら潰れても大丈夫だからな。」
と言ってまた笑う。
俺この人のこの笑顔に弱いかも・・・
誘われるまま、省吾の部屋に行き勧められるまま飲んだ。