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宇宙を救え!高校生!!

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 エレベーターで地下へ降りて、四人は方舟の中へと入った。

「うげー・・・・・なんか分解、再構築って何度やっても慣れそうも無いわ」
 足元をふらつかせて隼人が立ち上がった。

「お帰りなさいませ、マスター」
 声のした方に振り返ると、白いドレスを着た電子生命体の美少女、ハルが立っていた。

「あっ。ただいま・・・・・・でいいのかな?」
 またも、メイド喫茶を想像してしまったが、直ぐに気持ちを切り替える。

「えーと、僕達間に合ったのかな? 今の状況は?」
「ハイ。現在、経過時間は23時間55分40秒。闇の生命体の攻撃はまだ始まっていません」
「よかったー。せっかく決断したのに、間に合わなかったらどうしようかと思ったよ」
 僕はほっと胸をなでおろした。

「ハル。ちょっとあなたに聞きたいことが有るのだけど、いいかしら」
 突然、莉子が僕とハルの間に割って入った。

「ハイ。何でしょうか」
 両手を前に組んで、ハルは静かに莉子を見ている。

「この方舟にはお風呂とか、おトイレとか、リビングとか、私の部屋とか有るのかしら」

「イイエ。現状方舟の中で部屋、と呼べるものはこのコントロールセンターのみです」

「えっ! それじゃトイレに行きたくなったらどうするのよ? お風呂にも入れないなんて、私、耐えられないわ」
 莉子は相当ショックだったようで、額に手を当てて天を仰いだ。

「しかし、どうしても必要であれば、私たちのテクノロジーによって作り出す事はたやすいです」
 その言葉を聞くと、莉子の態度は一変した。

「絶対必要よ! 是非お願いするわ!」
 ハルの手を握って懇願する。そして、ここぞとばかりに。
「あと、クローゼットとキッチン、図書室も欲しいわね、それと私の部屋の床は大理石張りにしてちょうだい」
 立て続けにハルにお願いをする莉子だった。

 今から、この宇宙の生存をかけた冒険に出るって事を、分かっているのだろうか?

 僕は頭が痛くなってきた。

「それからハル。あなたの身長、体重、スリーサイズを教えて頂戴」
 莉子のその唐突な質問は、あまりにも場違いだと誰もが思ったが、まぁ、僕も少し興味があったので成り行きを見守ることにする。

「身長165センチ、体重45キロ、バスト87センチ、ウエスト55センチ、ヒップ80センチです」
 ハルがそう答えるのを聞いた莉子は。

「ま・・・・バストは私の方が一センチ勝ってるわね」
 と腕組みをしながら言うと。

「ちなみに、Gカップです」
 そうハルが切り返したのを聞くと、悔しそうに地団駄を踏んだ。

「も、もうひとつ質問よ。ハルは恋人とかいるの?」

 唐突に何を聞いてんだ、おまえは!

「恋人ですか・・・・・・・」

 ハルは珍しく返答に困っているようだ。

「電子生命体に生殖機能は無いので、恋愛や恋人といった概念は存在しません。敢えて答えるとすれば我々の種族すべてが恋人、となるでしょうか」
 ハルのその言葉を聞くと、莉子は僕を横目でチラッと見て、ニャリと笑った。全身に怖気が走った・・・・・・・・・何だ、今のは?

「じゃあ大和の事も、マスターなんて呼んで親しげだけど、何とも思ってないって事よね」
 勝ち誇ったように莉子が言うと。

「イイエ。マスターは特別な存在です」
 間髪を入れずにハルが答えた。

「ちょっと、大和! 特別な存在っていったいなによ! 私の知らない内に、いつの間そんな関係になっていたのかしら」
 莉子は、じろっと僕を睨んだ。
口元は笑っているが目は怒りに震えている・・・そんな微妙な顔で、矛先をこちらに向ける。

「いや、そんな関係になってないから。そもそも、昨日はじめて会ったばかりでしょ。そんな時間有るわけ無いでしょ」

 こんな話をしてる場合じゃ無いのに、なぜか、言い訳をしなくてはいけなくなってしまった。

「そ、そうよね・・・。ハル、嘘は良くないわ」
「嘘ですか・・・・・・その概念も我々には存在しません」
 莉子は、更に怖い形相で僕を睨みつける。
「自分にとって、必要不可欠な存在を思う気持ちを愛と呼ぶのであれば、ハルのマスターへの気持ちは愛なのかも知れません」
 ハルのその言葉を聞くと、莉子はふらふらとよろめいた。


 だが、それは莉子だけでは無かった。
 その場に居る全員がよろめいたのだ。


作品名:宇宙を救え!高校生!! 作家名:葦藻浮