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Daybreak 〜その先にあるもの〜

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部活にも慣れ始め、部員も少人数ではあるが30人くらいになり、それなりにまとまり始めてきた。気が付けば私達は2年生になり、後輩もできた。その頃からだろうか、喋るたび、声を掛けるたび、美也子の態度が少しずつ変わってきた。あるときは「おはよう」と声をかけても無愛想な態度で「おはよう」と返すだけであとは何にも喋らない。何を話しかけても反応が薄い。しかし、あるときは、「おはよーう、サチ!」とニコニコしながら声をかけてきて饒舌に話をしてくるのだ。私は戸惑った。一緒にいても急に態度が変わる。仏頂面になったり、怖い顔、睨んだような態度。その逆で笑顔で話しかけてきたり、ベタベタとくっついてきたり、頼ってきたり甘えてきたり。本当に、一言でいえば、「訳がわからない」。でも、私はひたすら我慢した。部活の雰囲気を悪くしたくないし、何より同じクラスでもあるから、衝突だけは絶対に避けたかった。それに、私達が上手く行かなければ、後輩にも迷惑をかける。耐えた。どんなにしんどくても、振りまわされ疲れきっても。たまにころっと見せる美也子の笑顔を希望にして。そして、誰にも相談をしなかった。相談をしたり、愚痴をこぼしてしまうと、美也子が悪者になる。何が原因なのかは分からないけれど、美也子を悪者に私はしたくなかった。
それから一年が過ぎた。私達は三年生。しっかり者で責任感が強いという勝手に周りが創り上げた虚像のせいで、私は部長になっていた。「よろしくお願いしまーす」私の挨拶から合奏が始まる。一日の予定を黒板に書き、顧問とどうすれば良くなるかを話し合ったりしていた。副部長は無責任。何一つ手伝ってくれない。同じ木管で、セクション練習なども一緒なのに、「私は別に関係ない、副部長なんて名前だけ」とやる気がなかった。
そして、最悪なことに一年たっても、美也子はそのままだった。特に、私にだけ。一つ、救いになったのは、部長になり、金管の愛菜とサナエと仲良くなったことだ。二人とも音楽についてはかなり厳しい。他人にも厳しいし、もちろん自分自身にも。私がかなり練習を重ねてきて上達したのを二人は認めてくれている。「幸って本当に音色良くなったよね!指もすごいまわるし幸がいたらクラリネット安定って感じ!」私は本当に嬉しかった。努力は報われる。努力すればするほど他人は認めてくれる。二人はコンマスとセクションリーダーをつとめていたから、自然と話す機会が増えどんどん仲が深まってきた。音楽のことで語り合ったり、お互いについて話し合ったり。楽しかった、心から。何もかも嫌なことを忘れて本気で笑うことが出来る。二人は私の太陽だった。でも、その二人にさえ、私は美也子のことについては何一つ相談することが出来なかった。愛菜もサナエも、美也子と仲が良かったし、美也子は特に愛菜のことを好いていたから。