Daybreak 〜その先にあるもの〜
美也子に振り回されてリストカットに手を出し始めた私。とどまることを知らず傷はどんどん深く深く、範囲も広がり手首だけじゃなく、腕、太もも、足といろんな部分を切った。そのリストカットのおかげというか、私はたくさんのものを得て、同時にたくさんのものを失った。
~「こうやって振り返ることに何の意味があるの?」隣ではハルも同じように振り返りをしている。与えられた宿題のように。「知らねえけど、振り返ることでたくさーんの気付きがもらえるんだってさ。しかも、気付きと同時にたくさーんの後悔もするんだって。あと、これを終えないと次の場所に行けないんだってさ。あーめんどくせ。俺振り返ることないよー。」ひねくれたようにハルは草むらに寝転がった。「そうなの?私、全然知らなかった。次の場所って何?そこ、ハルと一緒に行けるの?」「サチ、質問多いよ。」ハルは笑った。「サチはまだ知らなくていいよ。俺が先に振り返り終わったら教えてあげるよ。」「えー、何それ。ずるいー!ハルは何で知ってるの?」「神様がね、そうしなさいって。そんで、サチには理由とか告げずに振り返りをしてくれ、だってさ。」「神様って嘘くさい。冗談でしょ?」すると、ハルは草むらから起き上がって私の方に向き直り手を取った。そして、「俺もね、神様なんていないと思ってたよ。こんな差別とか不平等な世界作るようなやつは神じゃないって。でも、サチと出会ったことで神様とも出会えたみたいだ。最期の奇跡ってやつ?」最後におちゃらけてハルは笑ったけど、瞳は笑ってなかった。
「振り返らなくても、すでにたくさんの後悔を背負ってるのにね。そんな俺たちにこんな最低な課題を与えるなんて、いじわるなやつだよな。」
ハルの話は時々分からない。同じ場所にいて同じことをしてずっと側にいるのに、たまにお互いの世界が歪んでいるような気がしてくる。あれ?ハルに会ったのっていつだっけ?~
作品名:Daybreak 〜その先にあるもの〜 作家名:リサ