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「Nova」Episode

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 尻もちをついたティートが顔を上げると、女性は逆方向に向かって逃げ出していた。
「え、お、おい! 待てよっ!」
 慌てて女性を追いかけ、ティートは叫びながら名を呼んだ。
「待てって!ノックス!」
「バカティート!! ティラの所に戻れっ!!」
「お、おま……! バカはそっちだろうが! 3年も行方くらませて、どんだけ俺達が心配したと思ってんだよ!!」
「う、うるさい……!!」
 女性──ノックスの声が震えていることに気付き、ティートは一気に距離を詰めてノックスの腕を掴む。
「っはぁ、はぁ……何で、逃げんだよ……!」
 背後から声をかけると、ノックスの肩が小刻みに震え始めた。
 腕を離して正面に回り込むと、ノックスは大粒の涙を流して泣いていた。
「ノックス」
「バカッ……見るな!」
 振り上げたノックスの手を振り下ろされる前に掴み、その腕を手前に引き寄せてティートはノックスを抱き締める。
「な、なにしてるんだ……! 離せ……!!」
「バカはやっぱりお前だな」
 じたばたと腕の中でもがくノックスをより強く抱き締めると、ノックスは暴れるのを止めた。
「無事で良かった、ノックス……」
「っ……ティート、私、は……」
 弱々しい声で途切れ途切れにノックスは呟く。
「ダメ、だった……んだ……! 辛くて、……苦しく、なって……!」
 やがて、ノックスの腕がティートの背に回り、ティートのマントをぎゅっと握りしめた。
「これで……っ、いいと、思った……お前たちが、幸せにっ……!」
「ノックス、もういい」
「でも……違った……っ、私はっ……」
「俺も、お前がいなくなってから初めて気付いた。 ……俺は」
 二人の視線が交差する。僅かに腕から力を抜き、どちらからともなく顔を近付けた。
 二人の唇が触れる寸前、サクッと草を踏む音に二人の体はピタリと止まり、ゆっくりゆっくり顔を同じ方向へ向ける。
 そこには、草の上に足を一歩だけ出した状態で、目を見開いたライムが硬直していた。
 はっと我に返ったライムは、真剣な表情で呟く。
「心からすまん。 邪魔をした、続きをやってくれ」
「って、やれるかああああ!!!」
 顔を真っ赤にしたティートが、ライムに向かって叫び声を上げた。
 バッとティートとノックスは離れ、互いに背を向ける。
「何だ、やらないのか?」
「おまっ、お前なっ!!」
 真っ赤なティートを見て面白そうに口角を上げたライムに、ティートは深い深いため息を吐き出した。
 ノックスにライムが声をかける。
「元気そうだな」
「あ、あぁ……」
「生きてて、良かった」
 そう言ったライムにノックスは驚きつつ、微笑んで頷いてみせた。
 遠くで、ティラの演説に歓声を上げる声が聞こえる。
 
 空は雲一つない快晴。
 クリスタルに左右されるこの世界の小さな物語。
 語られる事のない、ノヴァを巡った物語が静かに幕を閉じた。
 
                                   Fin.





 あとがき
 
初めましての方は初めまして。そうでない方は、いつもお世話になっております。刹那です。
この「Nova」Episodeは私が創作をはじめてから、二作目の作品になります。
あ、いや、正確には違いますが、まともに創作というものを意識して作ったものとしては二作目です。
当初、このお話はもっと短く終わるような短編作品でした。
とある方にホラーというお題をいただき書き始めたものだったのですが、どういうことやら、気がついたら完全ファンタジーなお話に……おかしいですね。
これを書き始めて、私にはホラーは書けないのだろう、とそんな確信を持ちました。でもいつかはちゃんと書いてみたい気もします。
前にこのお話を載せていたのは、私のブログでした。とてもお世話になったブログサイト様だったのですが、つい先日サービスを終了してしまい、そこでの日記などの形跡がすべてなくなってしまいました。悲しい……。
三年もお世話になったので、とても心残りで仕方なかったです。ぐすん。
創作というのは何とも不思議なもので、創作の輪がどんどん広まっていきます。
私が創作を始めた頃は、誰か見てくれているのだろうかと思うほど孤独にやっていましたが、今となってはたくさんの創作家さんに出会い、たくさんの繋がりが持てています。
どれもこれも、ブログをやり始めて間もない頃からのおつきあいになる方々のおかげであると勝手に思っています。自分はコミュ障ゆえ、人付き合いに関して消極的なので、その方たちが手を引っ張ってくれなければ、今も孤独にやっていたことでしょう。

なにはともあれ、「Nova」Episodeをここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。
ブログ投稿時のままな文章が多々あったので、拙い文章だったと思います。すみません。
それでも、この作品を通して何か感じられた事が少しでもあるといいなあ、と思いつつ。
残っている謎は、いずれ別作品として書きあげる予定です。頑張ります。

では、長々と失礼しました。
読んでくださった皆様に、心からの感謝を!






作品名:「Nova」Episode 作家名:刹那