憑くもん。
Prologue:不規則に起こりうる非科学的予兆
昼、皿を割った。
何かの絵柄が小さく書かれた小さな、ありふれた小皿。
故意にではないし、だからといってうっかりしていたという訳でもない。
落としてしまったのには気がついた、しかし焦らずに見送っただけだった。
皿は無論砕け散る、でもそれにも自分は不思議に無関心だった。
「あ、大丈夫?」
母親に聞かれ我に返る。
そうだ、俺は皿を割ってしまったんだ。
割った破片で傷がついたのか足からちょっと血が出ている。
ただそれ以外に怪我はしていない、絆創膏を貼れば大丈夫だろう。
「大丈夫?さっきからぼーっとしてるけど。」
「大丈夫。」
返事も上の空、自分でもぼんやりしている日だと思う。
どうしてしまったのだろうか、受験生活の乱れが影響しているのか、それともただぼんやりしていただけなのか。
「あ、このお皿、小さい頃使ってたお皿じゃない。」
そんな事にも気づかなかった、そうやって母親に言われるまでは。