天使の現実
背中から天使の羽が生えていた。
驚く以上になんだか嬉しくて、走って台所に行き、
朝食を作っていた母に自慢げに見せびらかす。
「あんた、そのパジャマ破ったの? 先週買ったばかりなのに」
クルっと回って背中を見せた時に怒られた。
私はしょんぼりして、朝食のために席に着く。
「こら、その羽が邪魔でテレビが見れん」
今度は父に怒られた。
学校に行けばクラスの人気者になれるはず。
気を取り直して、支度を始める。
でも、一瞬で大きな問題に直面する。
制服が着れない……
背中の羽は大きく美しく、折りたたんでも背中からはみ出るサイズ。
制服の下に仕舞うのは物理的に不可能。
なによりせっかくの羽だ。出来れば出して見せびらかせたい。
仕方がないので、背中の上半分をハサミでくり抜いた。
来月から、お小遣いが没収されるのは覚悟の上だ。
着替え終わり、勢いよく玄関を開ける。
肩に力を入れ、私は勢いよく飛び立つ。
グングンと空に向かう私の体と、どんどん小さくなる街の景色。
そして私は気が付いた。
高所恐怖症の私に空を飛ぶのは向いてない……