ビニコン ラブ。
仕事帰りのサラリーマンや、部活帰りの学生。夕飯のおかずをあと1品といった主婦がこの時間には多い。
お菓子の補充とかこれからやらなくてはいけないのに、このピークを過ぎなければどうしようも無い。
「30番のタバコちょうだい」
「いらっしゃいませ。こちらでよろしいですか?」
奈々子はレジの後ろに並んだタバコの棚から慣れた手つきでマルボロを取り出すとサラリーマン風の男性に確認する。
「ああ。あっ、それとこれも」
そう言ってその男性はレジ横にあったウォーマーから缶コーヒーを取ると、レジに一緒に差し出した。
「560円になります」
「有り難うございました、またお越しくださいませ」
そんなやりとりを延々1時間ほど繰り返すと、店はやっと暇になってくる。
奈々子は春から情報系の専門学校に通いだしたばかりだ。お小遣いは高校生までと親に言われていたため、高校卒業後はアルバイトでもしなくては友達とカラオケすら行けない状況だった。
ちょうど高校卒業間際にここのコンビニのアルバイト募集を見つけ、卒業して直ぐに働いた。
GWもみっちりバイトをして、友達とカラオケどころかバイトしてる方が、今はたのしくなっていた。もともと高校時代は陸上部だったから、体を動かすのは全く苦にならなかった。体力もそれなりにあったし。
そろそろ、3ヶ月。ずっと奈々子と同じシフトだったオーナーの奥さんが妊娠されたそうで、先週から新しいバイトが見つかるまでこの超忙しい時間を1人で切り盛りさせられていた。
そして「今日新しいバイトが来るよ」と、さっきオーナーからメールが来ていた。
え?いきなり!?とは奈々子も思ったが、1日でも1時間でも早く来て欲しいと思うのは事実。
そしてピークが過ぎた頃、オーナーがやってきた。
「ご苦労様~。ナナちゃん、新しい人来てない??」
オーナーは奈々子の顔を見るなり聞いてきた。
「おはようございます、まだみたいですね」
「ダメだなぁ、初日から遅刻とは」
オーナーは腕時計を見ながら難しい顔をした。そのまま在庫を見てくるからと、バックヤードへ入って行った。
確かに、、初日から遅刻なんて一体どんな人なんだろう?奈々子は少し心配になっていた。やっぱり一緒に働く人が気の合う人ならいいなと思うのは当然の事だと思う。
それから直ぐにものすいごい勢いで1人の男性が入って来た。
「いらっしゃいま、、」
「す、すみません!!!!!遅くなってしまって!!」
奈々子の言葉も遮る程の大きな声で、そのお客さんはレジの前で頭を下げた。
この人がもしかして、、、?
「あー、来た来た。裕也くん、佐々木裕也くん。待ってたよー、、遅かったじゃん」
バックヤードにいたオーナーもその声に気付いて、レジまでやってきた。
「ほんとすみません、そこで道を尋ねられて、教えていたら遅くなってしまったんです」
「あ、いいよいいよ、中入って」
この男の人裕也くんの話もろくに聞かずオーナーは事務所へ裕也くんを案内した。
正直奈々子も、嘘付くならもう少しまともな嘘付けばいいのに、、とちょっと笑ってしまう。
すらっと伸びた手足が印象の、俗にいうイケメンの裕也君。歳は自分と同じくらいなのだろうか?
30分程度の説明と10分程度のレジの練習を済ませると、裕也君がデビューした。
こんなに早く??私の時はもっと挨拶の練習とか沢山させられたのに。
「オーナー、私の時はもっとみっちり声だしの練習とかさせられたんですけどぉ」
奈々子も3ヶ月もいると、オーナーとここまで話せるようになる。というのも、オーナーが飾らない人柄で話しやすいからだろう。
「ナナちゃんは声がちっちゃかったじゃん。裕也君はそこクリアしてるから」
そう言ってオーナーは奈々子にウインクする。
あぁ、確かに。。さっきのあれだけの声が出せれば十分だからな。と奈々子もあっさりと納得する。
「はいっ!と言うことで、俺は奥さんが心配なので帰るから。裕也君、ナナちゃんに聞けば何でも教えてくれるから、まぁ、いろいろがんばって」
「え!?私が教えるんですか?」
奈々子の驚く顔にオーナーはもちろんと言わんばかりの笑みと、グッドラックのジェスチャーで早々に店を出て行ってしまった。
残された奈々子と裕也はあっけにとられ、そこで固まってしまった。
「これください」
「あっ、いらっしゃいませ」
そうこうしているうちにお客さんがかごいっぱいにパンやジュースを持ってレジにきた。
奈々子は素早く商品をスキャンしていくと、隣で立っていた裕也が少しかがんで、手頃なレジ袋を出すと、奈々子がスキャンした商品を次々と、それも綺麗に入れていく。
「ありがとうございました。またお越しくださいませ」
「ありがとうございました!!」
お客さんが両手いっぱいに荷物も抱え帰って行く姿を奈々子と裕也は笑顔で見送った。
コンビニ一連の接客をすんなりこなしてしまった裕也を奈々子はビックリした顔で見つめた。
オーナーが時間をかけて教え込まなくても良いという意味が分かった。たかがコンビニと侮っていた自分は、かなりの時間を掛けてこの笑顔や声をマスターしたのに、さっき来たばかりの新人君が一発で出来るなんて。
「俺、接客始めてじゃないから、、」
裕也は奈々子の考えてることが分かったのか、そう言うと鼻の頭を掻いた。
「ううん!すごいね。私なんかより全然上手!」
感動屋な所のある奈々子は身を乗り出して裕也に言った。
裕也はその奈々子の迫力に反対に身をのけぞる感じで目を丸くしていた。
キラキラした目で見つめられる裕也はふいっと目をそらすと「お客さんだよ」と入り口に体を向けた。
お菓子の補充とかこれからやらなくてはいけないのに、このピークを過ぎなければどうしようも無い。
「30番のタバコちょうだい」
「いらっしゃいませ。こちらでよろしいですか?」
奈々子はレジの後ろに並んだタバコの棚から慣れた手つきでマルボロを取り出すとサラリーマン風の男性に確認する。
「ああ。あっ、それとこれも」
そう言ってその男性はレジ横にあったウォーマーから缶コーヒーを取ると、レジに一緒に差し出した。
「560円になります」
「有り難うございました、またお越しくださいませ」
そんなやりとりを延々1時間ほど繰り返すと、店はやっと暇になってくる。
奈々子は春から情報系の専門学校に通いだしたばかりだ。お小遣いは高校生までと親に言われていたため、高校卒業後はアルバイトでもしなくては友達とカラオケすら行けない状況だった。
ちょうど高校卒業間際にここのコンビニのアルバイト募集を見つけ、卒業して直ぐに働いた。
GWもみっちりバイトをして、友達とカラオケどころかバイトしてる方が、今はたのしくなっていた。もともと高校時代は陸上部だったから、体を動かすのは全く苦にならなかった。体力もそれなりにあったし。
そろそろ、3ヶ月。ずっと奈々子と同じシフトだったオーナーの奥さんが妊娠されたそうで、先週から新しいバイトが見つかるまでこの超忙しい時間を1人で切り盛りさせられていた。
そして「今日新しいバイトが来るよ」と、さっきオーナーからメールが来ていた。
え?いきなり!?とは奈々子も思ったが、1日でも1時間でも早く来て欲しいと思うのは事実。
そしてピークが過ぎた頃、オーナーがやってきた。
「ご苦労様~。ナナちゃん、新しい人来てない??」
オーナーは奈々子の顔を見るなり聞いてきた。
「おはようございます、まだみたいですね」
「ダメだなぁ、初日から遅刻とは」
オーナーは腕時計を見ながら難しい顔をした。そのまま在庫を見てくるからと、バックヤードへ入って行った。
確かに、、初日から遅刻なんて一体どんな人なんだろう?奈々子は少し心配になっていた。やっぱり一緒に働く人が気の合う人ならいいなと思うのは当然の事だと思う。
それから直ぐにものすいごい勢いで1人の男性が入って来た。
「いらっしゃいま、、」
「す、すみません!!!!!遅くなってしまって!!」
奈々子の言葉も遮る程の大きな声で、そのお客さんはレジの前で頭を下げた。
この人がもしかして、、、?
「あー、来た来た。裕也くん、佐々木裕也くん。待ってたよー、、遅かったじゃん」
バックヤードにいたオーナーもその声に気付いて、レジまでやってきた。
「ほんとすみません、そこで道を尋ねられて、教えていたら遅くなってしまったんです」
「あ、いいよいいよ、中入って」
この男の人裕也くんの話もろくに聞かずオーナーは事務所へ裕也くんを案内した。
正直奈々子も、嘘付くならもう少しまともな嘘付けばいいのに、、とちょっと笑ってしまう。
すらっと伸びた手足が印象の、俗にいうイケメンの裕也君。歳は自分と同じくらいなのだろうか?
30分程度の説明と10分程度のレジの練習を済ませると、裕也君がデビューした。
こんなに早く??私の時はもっと挨拶の練習とか沢山させられたのに。
「オーナー、私の時はもっとみっちり声だしの練習とかさせられたんですけどぉ」
奈々子も3ヶ月もいると、オーナーとここまで話せるようになる。というのも、オーナーが飾らない人柄で話しやすいからだろう。
「ナナちゃんは声がちっちゃかったじゃん。裕也君はそこクリアしてるから」
そう言ってオーナーは奈々子にウインクする。
あぁ、確かに。。さっきのあれだけの声が出せれば十分だからな。と奈々子もあっさりと納得する。
「はいっ!と言うことで、俺は奥さんが心配なので帰るから。裕也君、ナナちゃんに聞けば何でも教えてくれるから、まぁ、いろいろがんばって」
「え!?私が教えるんですか?」
奈々子の驚く顔にオーナーはもちろんと言わんばかりの笑みと、グッドラックのジェスチャーで早々に店を出て行ってしまった。
残された奈々子と裕也はあっけにとられ、そこで固まってしまった。
「これください」
「あっ、いらっしゃいませ」
そうこうしているうちにお客さんがかごいっぱいにパンやジュースを持ってレジにきた。
奈々子は素早く商品をスキャンしていくと、隣で立っていた裕也が少しかがんで、手頃なレジ袋を出すと、奈々子がスキャンした商品を次々と、それも綺麗に入れていく。
「ありがとうございました。またお越しくださいませ」
「ありがとうございました!!」
お客さんが両手いっぱいに荷物も抱え帰って行く姿を奈々子と裕也は笑顔で見送った。
コンビニ一連の接客をすんなりこなしてしまった裕也を奈々子はビックリした顔で見つめた。
オーナーが時間をかけて教え込まなくても良いという意味が分かった。たかがコンビニと侮っていた自分は、かなりの時間を掛けてこの笑顔や声をマスターしたのに、さっき来たばかりの新人君が一発で出来るなんて。
「俺、接客始めてじゃないから、、」
裕也は奈々子の考えてることが分かったのか、そう言うと鼻の頭を掻いた。
「ううん!すごいね。私なんかより全然上手!」
感動屋な所のある奈々子は身を乗り出して裕也に言った。
裕也はその奈々子の迫力に反対に身をのけぞる感じで目を丸くしていた。
キラキラした目で見つめられる裕也はふいっと目をそらすと「お客さんだよ」と入り口に体を向けた。