魔女と魔女狩り―Last―
―最終章―
…それから数日後、
ERRORで酒を飲んでいた俺とマスターに一通の手紙が届いた
送られ先は…
〝レイラ”
宛名は
〝マスター”と大きく書かれていて
隣に小さく〝ヴィクター”と書かれていた
…俺はマスターを読んでこの手紙を開くと2枚の便箋が封筒から落ちた
俺宛ての手紙を開いて読み始める
ところどころ字がにじんでいる
「…あの馬鹿…」
俺は唇を噛みながら手紙を読み進める
手紙の最後の方は
すべての字が滲んでいる
…なんなんだよ…
「…もっと早く、気づけよ…!!」
俺は叫ぶと同時に手紙を投げつけてから
カウンターい肘を付いて手で目を覆った
…手からは生暖かい水が流れる
手紙は投げつけたのにあいつみたいに…
レイラみたいにふわっとした動きでカウンターに降り立った
マスターは俺宛ての手紙を手にとって「みるぞ」と言ってから
読んだ
そして、一通り見終えてから最後の言葉をもう一度読んだ
〝ヴィクター…。私はお前のことが、好きだったみたいだ。
仲間だからとかじゃなくて異性として、お前が好きだったんだ
…もっと、はやく気づけば、よかったなぁ…”
そして、これが彼女の最後の言葉。
〝大好きだよ”
「く…そ……
俺だって……」
マスターは俺の頭に手をそっと乗せた
「…よかったじゃねぇか…。
あいつも、お前が好きで。
最後でも…気づいてもらえて…」
俺はひっく、ひっくと涙で邪魔されながらいった
「よくねぇよ…マスター
俺…、あいつに言ってねぇんだよ…
言えなかったんだ…俺…
あいつのこと、助けようとしなかったんだ…」
静かな酒場で俺とマスター二人だけ。
もうレイラはいない
昔のように、三人で笑って酒は飲めねぇんだ…
瞼の裏に焼き付いている幸せな時間
「…レイラ……」
本当に小さな消え入りそうな声でそうつぶやく
フワっ…と彼女が俺に後ろから抱き着いた、そんな気配がした気がした
…俺が願ったからかもしれない…
でも、もし本当に彼女なら……
俺は首に回されたような腕をつかんで
「俺も…大好きだ……」
これが本当に彼女の気配だったらいいな…
…伝えられなかった言葉
レイラ…お前だったら、いいな…
『ちゃんと、聞こえたぜ。ヴィクター』
バタンッ!と音を立てて窓が開く
もちろん誰も触っていない
そこからカラっとした風が吹き込む
…じゃあな。レイラ…
さようなら……
でももう少しだけ、お前のことを覚えさせていてくれ
…もう少しだけ。あの幸せだった時間を、大切にしたいから
ちゃんと、前に進むから…
だから、あと、
ほんの少しだけ……
「お前を愛させてくれよ。レイラ」
俺はレイラの手紙を握りしめて酒場からでた
俺は走る。
あてもなく走る、走る。
忘れないために。
彼女と一緒に行った場所を、見た場所を。
すべてを〝思い出”にして
大切に残して置くために
『はははっ!ヴィクター!』
―彼女の笑い声が聞こえた気がした―
作品名:魔女と魔女狩り―Last― 作家名:八月一日