レゴリス
しかし数時間立っても警報が鳴りやまなかった。聞いてみるとどうやらドームから酸素が足りなくなっているらしい。どうやら建設中に資材の一つが建設アームから外れ、ドームに衝突したらしい。ほかのドームには影響がなかったが、危険だからと緊急で救出船が地球から派遣されることになったとドーム内の放送で教えられた。私とシュミットは現状把握に努めた、少なくとも事故に遭って死傷した人たちの名前だけを控えるのに成功した。一日経つか経たないかのうちに最初の救出船は現れ、アメリカ人、ロシア人、インド人は帰っていった。その次の日にはヨーロッパ連合と日本の救出船が現れフランス人とドイツ人、イギリス人、そして我々日本人は地球に帰った。
私はというと月に残ることにした。死にはしない環境であったし、次の救助船か開発船に乗れば問題がないだろう。どちらにせよ誰も整備をしていないという状況は次の開発にとって致命的だろう。そんな理由をパイロットに告げて、私は残った。シュミットと彼の家族は私を心配してくれ、定員越えならドイツの船に乗れと言ってくれた。シュミットは最後まで良い奴だった。
実のところ私は別にそんな重大な責任を負って月に居ようと思ったわけではない。ただ、なんとなく月に残りたい、そう思った。
気づけば既に半年が経っていた。そろそろ新たな開発船が来てもいい頃だろう。物資の運搬ができなければ仕方がないし、この失敗から学んでより安全に作れる装置を整えてくれるに違いない。
ラウンジのソファに腰かけ、天井を見上げた。どうやらイギリスでは今昼頃らしい。半透明の向こうから二つの輝きが透過していた。