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未花月はるかぜ
未花月はるかぜ
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After Tragedy5~キュオネの祈り(中編)~

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キュオネの祈り【中編】1


僕等は、デメテルに続いて、神殿の中に入った。
14年以来の神殿。幼い頃、レーニスと僕が過ごした景色をしっかりと目に焼き付けておきたい。僕は、辺りを見回しながら、デメテルの後に続いた。

壁面には、農業や狩猟に明け暮れる人々の姿が描かれ、それに対し、高い天井には音楽に絵画に詩を嗜む神々の姿が描かれている。

ああ、こんな風になっていたんだな。
改めて見る神殿内は新鮮だった。

小さかった頃の僕は、辺りの景色なんか気にもせず、レーニスにその日起きたことをひっきり無しに話していた。レーニスは、今思えば適当に合図知を打っていた時もあった気がする。彼女が天才で、魔法の研究や人間の世話、様々な活動をしていたことを考えれば、常に僕だけのことを考えていたわけではないと思う。それでも、彼女が僕の手をしっかり握っていてくれた事を感謝している。

「二人ともキョロキョロしているわね。」
デメテルが振りかえって、僕等を見て笑った。ふと見ると、キュオネも物珍しいのか、口を開きっぱなしで絵を眺めている。僕は、それが不思議だった。
「キュオネは、神界で生活していたんじゃなかったのか?」
キュオネは、僕の顔を見ると恥ずかしそうに笑った。
「私、ここはそんなに通ったないよ。」
「ふーん…。」
ここは、入り口だから、一番通る場所だと思うんだけどな。
遠くから、音楽が聞こえてくる。
「相変わらず、ここは芸術に力を入れているんですね。」
僕は、前にいるデメテルに話しかけた。
「私達は、寿命が無いからね。時間に制限の無い分、色々出来るから、自ずとこういった分野も発達するのよ。」
デメテルは、そう答えた。
考えた事も無かった。上を見ると天井の神々は優雅に微笑んでいる。
「私としては、レーニスにも同じようになって貰いたかったんだけどね。あの子は、寿命があるからこそ、輝いて生きれるんだって聞かなかった…。私達の仲間入りする気が最期まで無かった。」
デメテルは、いつの間にか又前を向いた。ここからだと表情が見えない。どう答えたら、いいのだろうか…。デメテルの背中が小さく見える。