Higher and Higher (前)
祝Ⅱ
結局、ほのかは昼休み後の授業には来なかった。同じクラスの生徒も授業をしている教師も慣れたもので、ほのかがいないことを口にする者は誰もいなかった。
総一郎は、授業後に屋上に向かった。ほのかはもういないだろうとわかってはいたが、あの地面に置いたチケットがどうなったか気になったのだ。
ほのかは受け取ってくれただろうか。それとも、そのままになっているだろうか。
屋上の扉を開けて、赤くなった空の下に出る。ドキドキしながら、タンクの裏をのぞいた。
「…………」
案の定ほのかの姿はなく、重石にした石だけが転がっていた。その下にチケットはない。
「……もらってくれたんや」
総一郎はぐっと拳を握った。そのまま上にふり上げる。ガッツポーズ。
「よっしゃー!」
その場で飛び跳ねた。誰も見ていないことをいいことに、気が済むまで手を振り回して、叫び続ける。
うれしかった。一年間話しかけ続けて、ようやくふり向いてもらえたような気がした。
作品名:Higher and Higher (前) 作家名:春田一