本当にあったゾッとする話7 -海から来た黒い男たち-
あの黒いウェットスーツの男たちのことを思い出したのは、それから25年後のことだった。
2002年9月17日、小泉元首相が北朝鮮を訪問し、金日成と会談を行った。
この訪問により、北朝鮮による日本人拉致が明らかになったのだ。
私たちが黒いウェットスーツの男たちと出あった1977年には、9月19日に久米裕さん、11月15日に横田めぐみさんが拉致されている。久米裕さんの拉致は、私たちが男たちと出会ってからわずか2週間程度後の出来事でしかない。
私は、あの不気味な男たちが北朝鮮の工作員の一団だったのではないかという疑いを、今でも捨てきれない。
新潟や鳥取の海岸にウェットスーツの一団が上陸したら、異常な出来事であり、ものすごく怪しいが、それが石垣島の海岸であれば、あたりまえの景色なのだ。
漁船に偽装した特殊船や潜航艇で八重山諸島のどこかの島に近づき、泳ぐか潜るかして島に上陸し、さらにそこから日本本土に移動する。
この方法であれば、日本国内への不法入国はたやすいのではないだろうか。
あの日、フロートの上にいたのが、もしも自分一人だったら。
そう考えると、私は今の自分がとても幸運に思えて仕方がない。
- 完 -
作品名:本当にあったゾッとする話7 -海から来た黒い男たち- 作家名:sirius2014