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ようこそボクの部屋へ…ダレ?

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よしよし、せっかくの登場に少しは褒めてやるか。、
――シャコタン流線型で何処にでも潜むことのできる体――
――スピード感のある足さばきの発達した脚は俊足を誇る――
――床、壁、自在に這い上がるハイテクな足回りの仕様――
――卵時代は 母に抱えられ育つ 案外過保護な家族愛――
――体内の栄養で何日も食べなくても生き延びる生命力――
はぁ、言っていて、溜め息が出るよ。

『何言ってんだぁ? まあそろそろ帰るよ。じゃあ明かり消してくれないかなぁ。またな!おやすみ』

ゴキブリは、そそくさと物陰に入り込んで、その後出てこなかった。
ボクも、今夜は、追っかける気も失くしていた。

さて、そろそろ寝るか。
今度は、ダレと会うか楽しみだ。

風呂に入りに行くと、浴室の壁に チョウバエというやつがいた。
動きはのろく、かといって 少々のシャワーではへこたれない。まあ、適当にしてよ。
そして ボクは、布団に入った。
耳元で囁くキミの翅音。少しも心地良くないよ。止めてよ。
それ以上、騒ぐとボクは、きみをこの手に握り締めてしまうよ。ほら、あっちへ行ってよ。

あぁーもうどうにも 我慢ができない!
バチッ!
ボクの腕に 一点の刺激を感じ、そこを思いきり叩いた。肌に感じた張り手の痛みと、何かしらの手応えを感じた。
部屋の明かりを点けて、見ると、きみと赤い液。そうそれはボクの命の流れ…別名を血というやつだ。
ティッシュで拭う。きみがボクに寄り添った証としての ぷっくりと膨れてきた跡を痛痒く感じた。
そんな感覚をボクは、メントールの刺激で誤魔化し眠った。

翌朝、そんなことも忘れ、布団を撥ね退け ボクは 部屋で深呼吸をした。
手先のあたったハンガーラックから ひらひら白いものが舞い落ちた。
いや、落ちたのではない。翅を広げ羽ばたき飛んだ。
あれ?そんなところに居たの? 寝癖髪のボクの上を飛んでいる。

『くすくす、髪くしゃくしゃね。風の吹く草原みたい。くすくす』

今日もいい天気だ。朝の目覚めを待っていてくれたこのこと一緒に散歩に出かけよう。


    ― 了 ―