エイユウの話~冬~
それが彼を追い詰めた・1
アウリーに導かれるまま、長い長い階段を下っていく。階段にある明かりはただただろうそくだけで、いつ消えてもおかしくないほどゆれていた。それでも綺麗過ぎる純白の壁に反射して、足元ははっきりと見ることが出来る。美しい、と表現しても誰も異を唱えないだろう。
階段を下っていく最中、幽霊屋敷か悪魔の巣窟にでも入ったような声で、誰にともなくラジィが漏らした。
「キースは、何でこんなところにいるのよぉ」
学園の不穏分子を閉じ込めておくにしたって、少し大げさすぎる。キサカもラジィ同様、何故こんなところに、と考える。しかしそれはそんな情けない思いではない。ただの疑問だ。彼の前を歩いているアウリーは、意外なことに怖くないのか妙に堂々としていた。ポニーテールを大きく振って、ずんずんと歩を進めている。
階段を下り終わると、目の前に広がるのは、囚人たちの群だった。透明な硝子越しに見えるその姿は、怖がっていたラジィだけでなく、先ほどまで余裕のあったキサカまで恐怖を抱く。一人ひとりの顔を覚えているわけではないが、罪人であろうとなかろうと、多くの人が力なく人が座っている光景は怖かった。元気に暴れていてくれた方が、まだ怖くなかっただろう。ラジィは思わず前を歩いていたアウリーの肩に引っ付いた。そこで初めて、アウリーが口を開く。
「大丈夫ですよ。マジックミラーなんで、あっちからこっちの姿は見えません」
ちなみにそのマジックミラーに導師による結界が張られていることは言うまでもない。また、牢の中では通常魔法は使えないらしい。