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エイユウの話~冬~

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「連絡取れた?」
 もちろん「キースとの」である。彼は顔をしかめることで、失敗を伝えた。
 シャウダーでの連絡は、通常学籍番号がそのまま電話番号になっている。そのため、連絡を取ること自体はさほど困難なことではない。しかし、この中でキースと連絡を取れるのは、キサカに限られていた。
 なぜなら、「イジメ」が盛んな時期、キースのシャウダーはモテモテだった。まぁ、いたずら電話みたいなものだ。シャウダーの通話履歴を見た導師、準導師陣は、これを防止するために、キースのシャウダーには面倒な許可を申請したものしか受信しないようにしたのだ。彼からの発信はもちろん申請不要だが。しかしこれはあくまでいたずら電話による回線混乱を防止したもので、迫害対策ではない。
 そしてその面倒な手続きを行ったのはキサカだけなのである。ちなみにラジィは面倒臭がり、アウリーは「友達」とうそぶくやからも多いということから、「条件不足」とされて許可が下りていなかった。しかし事実は条件不足などではなく、導師の娘が金色と仲良くしていることが世に流れるのがまずいとか、そういう面白くもない理由だろうと、そのときキサカはけなしていた。
 シャウダーの画面をじっと見たまま、キサカは固まる。来たばかりのアウリーは、席に着きながら不思議そうな表情をする。ふいに彼はシャウダーをいじりだし、また耳に当てた。どうやら時間を置いてかけ直すようだ。
「さっきからずっとああよ」
 アウリーの隣に座ったラジィが、首をかしげて肩をすくめた。冷静な人種の彼が、ここまで落ち着かない様子なのは珍しい。キースがいないことよりも、アウリーはそれが一番違和感の根源だった。
 しばらくして、また彼はシャウダーを切った。そのままそれを、クッションの効いた座席に放り投げた。いくらクッションとはいえ、在学期間のみ使用可能という通信手段の安物が、そんな強度を持っているわけがない。失敗しては壊れる可能性のある代物だ。
 そのため、ラジィはキサカに注意する。
作品名:エイユウの話~冬~ 作家名:神田 諷