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エイユウの話~冬~

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「キースが何かに巻き込まれているのは解ったわ。でもね、だとしたらあんたがいなくなったらだめなのよ。最高術師のあんたがね」
 実力の話だけではなかった。最高術師にはいろいろと負荷がかかると同時に、特別手当のようなものも存在する。キースがそれを使用したのであれば、同じ最高術師であるキサカにしか彼を追う事は出来ないのだ。
 そう言われて、やっとキサカは冷静になった。
 が、怒りが取れたわけではない。彼は二人に謝ると、すぐに部屋を出て、エレベーターに向かって歩き出した。メーラシエラをしまってから、ラジィはアウリーの手を引きながら慌てて追いかける。
 緑色のじゅうたんと真っ白な壁が、迫ってくるような錯覚がした。非常に開放的な色合いのはずなのに、焦った気持ちがキサカの心を圧迫したのである。
 そんな中にいると、時間が経つのが妙に長く感じられて、おかげで悠々と落ち着いて物事を考えることが出来た。
作品名:エイユウの話~冬~ 作家名:神田 諷