エイユウの話~冬~
それが全ての引き金になった・1
秋の終わりに開催される秋祭りが終わり、学園内は冬一色になった。制服も冬服になり、木々の葉は完全に落ちきっている。中庭の芝も茶色くくしゃくしゃになり、その様子から外の寒さをうかがえる気がした。土の色とは似ても似つかない独特な茶色さが、校舎の白さとマッチしているのも味を感じる。
ラザンクール・セレナは一人、緑の授業を受けていた。ストーブの臭いにたまらず窓を開けたが、入ってくる空気はいささか冷たすぎる。彼女は恨めしそうに自分で開けた窓を見た。物腰柔らかな導師の声で眠くなっていた彼女を、起こそうとしたように感じたからである。しかしそんなわけもなく、窓越しにいつもの中庭が目に入るだけだった。
おもむろに彼女は教室内に目を戻し、最前列に注目する。その席にはいつも決まってある生徒が座っていた。しかし、ここ最近彼の姿を見ていない。
キートワース・ケルティア。まばゆい金髪が特徴の友人であり、彼女がしょっちゅう世話を焼いている問題児でもある。また、秀才の彼女をもってしても、揺るがすことすら出来ない絶対的な専攻の最優秀生徒だ。
といっても、もともと授業をサボることはそれほど珍しいことではなかった。おかげでそのたびに彼女は遣わされ、授業を受けられないことも多い。
そこで彼女は疑問を持った。