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将来の夢

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実家に着くと、久々に息子が帰って来たのが嬉しいらしく
母親は、あれやこれやとお菓子をテーブルに広げ、ご近所やら親戚の話題などをマシンガンのように言葉の雨を息子へ浴びせた。
これも親孝行の一つと思い、大人しく相槌を打つ。
話の内容が、どこまで彼に吸収されたかは、定かではないが…。
しばらくすると、満足した母親は、目の前のすっかり冷めてしまったお茶を一口飲んで一息。
透かさず、母親に文集の件を聞く。
「母さん、俺が小学生の時の文集ってまだある?」
「たしか…戸棚のどこかにまとめて取ってあるはずよ。でも何故?」
「いや~今朝夢で、昔の授業参観の時の夢を見てさ、参観日にみんなの前で読んだ作文の内容が気になったんだよね」

ぶっ

「ぶ?」
母親は、思わず吹き出し笑い始めた。
「なんだよ!なんで笑うんだよ」
母親は、困惑する息子を余所に、爆笑。
「だって、母さん思い出しちゃって!あれでしょ?将来の夢の作文」
言いながら、また笑い始める。
何時まで笑うんだか?
「んだよ。何がおかしいんだよ」
「あんた忘れちゃったの?母さんあの時、本当に恥ずかしかったわよ~。
今となっては、笑い話だけどね。」
「……一体俺の将来の夢どんなだったんだよ?」
文集を見るより聞いた方が早いと思ったのだが。
「私が言うより、自分で書いた事なんだから、本人が読んだ方がいいわよ多分。
で、その夢が今からでも叶うか考えてみれば?ぶぶぶっ」
母親は、笑いながら戸棚を探し始め、すぐに文集を見つけ出し手渡してくれる。

表紙には、『2年1組文集』と書いてある。
ページをめくった。
七海…。
『な』だから、もう少し後ろかな?
隣でいまだに笑いをこらえる母親を尻目に、自分の作文のページを探す。

「あった!

どれどれ~」

自分の作文を見つけ、そのページの文字を目で追う。

でも、本当になりたいものは……
でも、本当になりたいものは、

暴れん坊将軍です。

「…?何?暴れん坊将軍?なんだこれ?」

母親は、こらえられずまた吹き出した。

『暴れん坊将軍になって、悪代官や、悪い商人などを、刀で成敗し、平和な世の中にしたいです。』

「……。思い出した。俺…父親が時代劇ファンで、一緒によく時代劇の番組を見ていて、暴れん坊将軍が凄く好きで、憧れてたんだっけ…
にしても将来の夢が、暴れん坊将軍てー俺……何者…?」
「あら、でもあんたその作文をみんなの前で読んでる時、得意気だったわよ」

小さい時の、
大きな…大きすぎる夢に笑うしかない。


――――

将来の夢は?

「暴れん坊将軍です(笑)」


   =END=
作品名:将来の夢 作家名:こまごめ