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箱庭ではない風景を

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箱庭ではない風景を








この子は高校生と同等の絵を描いていると、小学校の一年生のときの教師は驚いた顔で小生の親に向かって云ったらしい。
 友だちもなく、無口で、絵ばかり描いていた子供だった。その子供に画家が眼に止めた。
小生が初めて職業画家から絵の描き方を習ったのは、四歳か五歳の頃だったらしい。
 だから小学生が、大人が驚くような絵を描いていた。
 今も絵を描いている。若い頃は下手な油絵を百五十枚も描いた。七割は風景画だった。
 最近は下手な水彩画を描いている。やはり、全部風景だ。
 人間が風景を観て感動するのは、巨大な空間を認識しながらだという気がする。少なくとも、小生の場合はそうだ。
 小生が絵を描くとき、描いている地点から最も遠くに見える山までの距離感、空気感がどの程度表現されているか、ということが最重要課題である。
 風景画の名手の共通点は、風景を描いているということである。箱庭を描いているのではなく、風景を描いている。
風が流れている空間の巨大さを表現するのが、風景画だと思う。
雲や山や樹木や雑草や水面や建築物を描くのは、空気を描くためである。

                 了