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風のごとく駆け抜けて

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「へぇ、陸上競技場の近くにこんな体育館があったんだぁ。わたし知らなかったよぉ」
「そうなの? あたしは中学生の時にバスケの試合で何度か来たから懐かしいって感じだけど。それに競技場からもこの体育館見えてるでしょ?」

驚く紗耶に対し、麻子はさも当たり前のように答える。

実は私も体育館の存在を知らなかったし、競技場から見えると言うのも今知ったのだが……。

麻子に言うと何を言われるか分かったもんではないので黙っておくことにする。

「さて、時間もないし、お前らはさっさと開会式に行って来い。私はエントリー受付とオーダー表を提出して来るから」

永野先生に急かされ体育館に行こうとする私達の横で、由香里さんが困っていた。

「私はどうしたらいいの? 綾子」
「え? 由香里は……車で寝てても良いけど」

それを聞いた由香里さんは永野先生の頭を軽く叩き、
「じゃぁ、何をしても良いってことね。折角だから開会式でも見るわ」
と、私達と一緒に体育館に向かって歩き出す。

体育館の中はすでにたくさんの人がいた。

永野先生の話によると、今年は男子が46チーム、女子が35チーム参加しているらしい。

この駅伝、ゼッケンは昨年の順位で毎年変わるようになっている。

初出場となる桂水高校は35番であり、城華大付属は1番となっていた。

「それにしても、人が多いかな」
「まぁ、参加校も多いしね。そう言えば、晴美って部活動での開会式って初めて?」
「と言うより、美術部で開会式のあるような大会ってどんな大会なのかな」

晴美に指摘され、自分がいかに的外れなことを言ったのか気付き、思わず顔が赤くなる。

しばらく雑談をしていると、体育館の入り口付近に城華大付属が入って来るのが見えた。

王者、城華大付属高校。駅伝と言う大会において、その存在感は抜群にある。

その証拠に彼女達が歩くと他校の選手が道を開け、さながら旧約聖書に出て来るモーゼの話のようになっていた。

「ロングコートまで蛍光オレンジ」
「あ、それあたしも思いました。ユニホームといい、コートといい、目立ちますよね」

城華大付属を見た一番最初の感想がそれですか。
とツッコミを入れたくなるような、久美子先輩と麻子の一言。

でも考えようによっては、緊張もしていないし、城華大付属を変に意識してないと言うことで良いのかもしれない。

「それでは間もなく開会式を始めたいと思います。各学校ごとに一列でお並びください。ステージに向かって右側から男子のゼッケン順、その次に女子のゼッケン順でお願いします」

アナウンスが流れると、各学校が動き始める。
私達は女子の一番最後、つまり体育館の一番左端なのでわりとすぐに並ぶことが出来た。

そして、始まる開会式。

最初のうちは、ついにやって来た駅伝の開会式と言うこともあり緊張もしていたが、色々な人のあいさつとか話などで、若干飽き気味になってしまう。

「続きまして選手宣誓。昨年度男子優勝校、北神高校。女子優勝校、城華大付属高校。両校のキャプテンは壇上にお上がりください」

どうも選手宣誓は昨年度の優勝校がやるようだ。

つまり私達が今年城華大付属を破れば、来年は葵先輩があそこに上がると言うことか。

そして、ふと思った。

もしかして永野先生もやったことがあるのではないだろうかと。

そんなことを考えつつ、ステージに上がる人物を見て、驚いた。
城華大付属は宮本さんだとばかり思っていたら、桐原さんだったのだ。
キャプテンとエースは別と言うことなのだろう。

無事宣誓も終わり、開会式も終了となる。体育館の外で待っているであろう永野先生の元へ全員で向かう。