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風のごとく駆け抜けて

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「おいおい、澤野の水着ってこんなにも客を呼べるのか」
あまりの忙しさに、いつの間にか手伝いをしている永野先生が驚いていた。

他の部員も「恐るべし、聖香。いや、聖香の水着姿」とか言っていたが……、私には分かってた。この呼び込みにスクール水着は全く関係が無いことを。

その証拠に、駅伝部でお好み焼きを買った人のほぼ9割が、そのまま中庭のメインステージへと移動している。

つまり、メインステージを見に来た人が、中庭に入ってすぐにある駅伝部の模擬店で買い物をしているだけなのだ。

私は外で呼び込みをしているので、それを見ることが出来るが、他のみんなは中で忙しく働いてるため分からないようだ。

きっと、私が制服姿でも売り上げは変わらないだろう。
ただ、他のみんなが私の水着効果と思っている以上それも難しそうだ。

「みなさま。お待たせしました。後10分でミス桂水を始めたいと思います! 参加者のみなさま、ステージへお集まりください。そして、急な提案ですが、せっかくの文化祭。クラス、部活ごとに色とりどりの格好をされていると思います。折角ですので、ミス桂水に参加される方は、制服に着替えること無く、そのままの格好で集合をお願いします」

それを聞いた瞬間、私は「嘘でしょ!」と叫んでしまい、すぐそばのメインステージでアナウンスをしていた女子生徒に、「良いですね。その格好。なんと駅伝部からの参加者は水着にブラウスと超悩殺的です」とマイクで放送されて、逃げることが出来なくなっていた。

私を含め、ステージに上がって来た人数はざっと見ても50人近くいる。

赤や青、黄色などカラフルなTシャツに制服のスカートを履いている子、そのまま制服姿の子、あとは部活の格好なのだろうか? 袴姿や、テニス、バスケ、バレーといった競技のユニホーム姿の子がいた。中にはメイド服姿の子も2、3人。

ただ、少なくとも水着を着ているのは私だけのようだ。

「それではみなさん、お待たせしました。ただいまより、ミス桂水を始めたいと思います」
司会者の一言に会場が歓声に包まれる。

「みなさん、素敵な女性に必要なものは何だと思いますか。私はこう考えます。知力、体力、時の運だと。と言うわけで、まずは○×クイズです」

言い終わると同時に派手なBGMが流れる。
なんだろう、この力の入れようは。

「ちなみにこの○×に必要なのは知力だけではありません。体力も重要な要素になって来ます。みなさん、このステージ南北にある渡り廊下の3階をご覧ください」

言われて、ステージに上がっていた私達ばかりか、会場の人達も渡り廊下に目をやる。北側の3階には大きな「○」と書かれたプラカードを持った男子生徒が。南側には同じく「×」と書かれたカードを持った男子生徒がいた。

「今から問題を出しますので、〇と思った人は北側の3階まで。×と思った人は南側の3階まで走って行ってもらいます。なお、制限時間は50秒です。間に合わない場合は失格となります。それに伴い、現在、通路を文化祭実行委員にて交通規制しております。ご協力お願いします」

いや、50秒ってわりと全力疾走しないと間に合わない気がするのだが。

「それではさっそく一問目行きます。なお、問題を言った後にスタートの合図を鳴らしますので、その合図が鳴ってから50秒とさせていただきます。それでは第一問」

司会者のセリフと同時に、ジャジャンとテレビでお馴染みの効果音が鳴る。

「藤井校長先生の3歳になるお孫さんの名前は、しょうた君である。〇か×か。それでは行きます。よーい」

少し間があってスタートの合図が鳴る。
あ、なんか陸上のスタートみたい。
と一瞬だけ思いながら、私は走り出す。

走り出したのは良いが、まったくの勘だ。
そもそも、さっき知力と体力と言っていたが、これはどう考えてもただの運のような気がする。

別にここで敗退しても悔しいとも思わない。
葵先輩が勝手に申し込んだだけだし。

ただ……、悲しい駅伝部の性なのだろうか。クイズに負けるのは悔しくないのだが、3階の渡り廊下にたどり着くまでは誰にも負けたくなかった。