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風のごとく駆け抜けて

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私達も3年生。進路について真剣に考える


日本選手権が終わった次の日、学校へ行くと学校中が大騒ぎになっていた。

全国大会に出場しただけでなく、全国1位になって帰って来たのだから、騒ぎにならないはずがない。

出場した時と同じように緊急の全校集会が開かれ、私は全校生徒の前で校長先生から日本選手権で貰った賞状を受け取る。

その後、校長先生の有り難いお話があり、永野先生からも言葉を貰う。
ちなみにこの間、私はステージに用意された椅子にずっと座っていた。

2人の話が終わり帰れるのかと思いきや……。

「それではせっかくですので、澤野さんに今回の日本選手権の体験談を語ってもらいたいと思います」
言われた時には一瞬目まいがした。

原稿も無しに全校生徒の前で話をするのが、ここまで緊張するものだとは思いもしなかった。

正直、何を話したか自分でも覚えていない……。

その騒動の次の日には校舎の壁に「祝! 日本選手権女子3000m障害 優勝 澤野聖香」と書かれた大きな横断幕が貼られていた。

その4日後から行われた中国総体。
永野先生の予想通り、紘子はインターハイ出場を決めた。
本人的にはまたもや雨宮桂に負けたのが悔しかったらしく、素直には喜べないようだったが。

それと、言葉では紘子を称えながらも永野先生の眼は死んでいた。
きっと飛行機のせいだろう。

ちなみに同じく中国総体に出場したアリスは3000mで8位。
1500mに出場した麻子は7位と2人とも残念ながらインターハイ出場を逃してしまった。

中国総体も終わり、試合もひと段落つくと今度は試験が襲って来る。

1年の時に理科教師になりたいと思い、勉強を頑張り始めた時には順位もぐんぐん上がって行ったが、ある程度上がってしまった現在、その上がり幅も小さくなって来た。

でも話を聞く限り、今回もなんとか麻子より上にいることが分かった。

「おかしい。1年の時は聖香に負ける気なんてしなかったのに。今ではどれだけ勉強を頑張っても勝てない」

麻子は本気で悔しがっていた。
やっぱり麻子は、どんなことに対しても負けず嫌いなのだなと改めて思う。

テストが終わり、今日から部活解禁と言う日。
放課後に私達3年生全員が永野先生に呼ばれる。

「どう考えて思い当たることがないんだけど……。あたし達なにかした?」
「いや、怒られるって決めつけるのはどうかな」
「そうだよぉ。あさちゃん。逆に褒められるかもしれないよぉ」

私を含め、全員が呼び出された理由も分からず、あれこれ想像しながら生物・化学準備室へと向かっていた。

「失礼します」
麻子を先頭にみんなで生物・化学準備室に入る。
永野先生は白衣を着て、薬品棚からあれこれと薬品を取り出していた。

こう言う姿を見ると、昨年姉のいる信徳館大学で色々と体験したことを思い出す。

「早かったな。ちょっと待ってろよ」
それだけ言うと永野先生は忙しそうに授業の準備を続ける。
たった数時間ではあるが大学で色々教えて貰ったこともあり、この準備室の機材なども妙に親近感が湧いていた。

10分もすると永野先生が戻って来る。
近くにあった椅子に座ると腕組みをして私達を真剣な顔で見て来る。

「さて。3年生に集まてもらったのは、ちょっと話があってな」
永野先生の一言で私は一気に緊張状態になる。
他の3人も同じようだった。

「お前ら。部活どうするんだ。昨年も一応大和には聞いたんだがな。ほら、他の3年生はほとんどが夏の県総体で引退したろ? 仮にも受験生だしな。一応は個人の意見を尊重しようと思って」
永野先生の発言に、誰もが大きなため息をつく。

「いやいや、なんだよその反応」
私達の反応が予想外だったのか。永野先生にしては珍しくうろたえていた。

「まず言っておきます。少なくともあたしは駅伝が終わるまで絶対に引退しません。と、言うより始めから12月まで部活をやる予定で人生設計を立ててます。親にもきちんと理解してもらっています」

麻子が誰よりも先にきっぱりと言いきった。

「わたしもです。昨年はわたしのせいで都大路を逃してしまいました。あのままでは終われません」
「私もマネージャーとしてですが、自分の出来ることを最後までやりたいです」

麻子、紗耶、晴美の決意を聞き、永野先生も何か思うことがあったのだろう。
笑顔で私達を見つめる。

「お前らには聞くまでもなかったな。分かった。正直言うと、お前ら全員が残ってくれるのはありがい。これからも頼むな」
永野先生の言葉を聞き、3人も「はい!」と返事をする。

「あの、すいません。私の意見は?」
ここでなにか喋らないと置いて行かれそうな気がした。

「せいちゃんは聞くまでもないと思うけどなぁ」
紗耶の一言に全員が頷く。

「そもそも聖香。あなたから走るのを取ったら何も残らないわよ?」
「ちょっと! 麻子。それはさすがに酷すぎでしょ? どうも思う晴美?」
同意を求めて晴美を見るが、なぜか苦笑いをされた。

そのまま視線を紗耶へと向けると目を逸らされる。
永野先生を見ると「ドンマイ」とものすごく可愛い笑顔を返された。

みんなは受験と勉強の両立と言う意味で部活をどうするか聞かれているのに、私だけは辞めたら取り得が無くなるから続けた方が良いと言うことになっていた。

そんなやり取りの次の日、私はまたもや永野先生に呼ばれた。
それも今回は私1人。しかも昼休みにだ。