風のごとく駆け抜けて
お風呂から上がり、部屋に戻るとみんなが随分と騒がしくしている。
「だったら、速い順でいいんじゃないかぁ」
「いや、ダメ元でもきちんと形は作るべきですし」
「元々スピード練習なんですよね。アリス的にはジャンケンでも」
「あの……アリスちゃん。それで私が入ったらやり直しでもいい?」
いったい何の話をしているのだろうか。
いや、大体見当はつくのだが。
「よし、聖香に決めてもらいましょう」
突然麻子が私に話をふって来る。
その一言にみんなが一斉に私を見る。
「はぁ……。じゃぁ、1走が麻子、2走が紗耶、3走がアリス、4走が紘子。これで良い?」
適当にあしらう様に言って、私はお風呂道具を終い始めた。
と、後ろにいるはずの全員が黙りこんでいるのに気付く。
あまりの静けさが不気味だったので、後ろを振り返る。
「ちょと、なんでリレーのオーダーを決めてるって分かったの?」
「すごいよぉ。せいちゃん! まったく隙のないオーダーだよぉ」
「すごいです……。澤野さん、永野先生みたいです」
私が後ろを見ると、みなが口々に言葉を発する。
みんながバラバラに喋るので、まさに不協和音だ。
それを虫を追い払うかのように手を振って黙らせる。
「いくら私でも分かるわよ。で、これで本当に良いの?」
私の問いかけに、全員が二つ返事で頷く。こ
うしてリレーのメンバーも無事に決まり、大会初日は終了した。
作品名:風のごとく駆け抜けて 作家名:毛利 耶麻