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風のごとく駆け抜けて

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そんな晴美との出来事から3日後の部活中のことだった。

グランドのゴール地点すぐ横にある、広いアスファルトのスペースにトラックが入って来た。それも、小さなクレーンのアームが付いたトラックだ。

「お、ユニックだ」
隣にいた麻子の一言で、初めてそのクレーンが付いたトラックの名前が分かる。

「てか、湯川さん詳しいですね。アリスはこう言うの全然ダメです」
アリスが言うと麻子も「まぁ、兄が仕事で使ってるから知ってるだけだけどね」と笑っていた。

永野先生がそのユニックに向かって、真っすぐに歩いて行くのが見えた。

それと同時に運転席のドアが開き、降りて来た人を見て私は驚く。
なんと由香里さんだ。

他の部員も驚きの声を上げる。

そう言えば、アリスは葵先輩の卒業式で由香里さんを見ているが、梓は初めてのはずだ。

そう思って梓を見ると、案の定よく状況を理解していなかった。
それに気付いたのか、朋恵が説明するとすぐに納得したようだ。

きっと由香里さんについては、葵先輩から話を聞いたこともあるのだろう。

むしろ、今回は由香里さんの方が驚く方だった。

「あれ? 大和さん?」
「いやいや。これは大和は大和でも大和妹だから」
目を丸くして驚く由香里さんに、永野先生がなんとも適当な説明をする。
いや、確かに間違ってはいないのだが。

そう言えば、永野先生は梓のことをいつも「大和妹」と呼んでいる。
今現在、葵先輩も卒業して大和姓は梓だけなのだから、妹はいらないと思うのだが。

「ところで由香里さん。どうされたんですか? トラックから出て来たのを見てかなりビックリしましたし」
紘子の質問に、みんなも頷く。

「ああ、綾子に頼まれていたものを運んできたのよ。で、綾子。どうするの?」
「そうね。例の物は移動は可能なのよね。だったら、トラックのすぐ横に置いてくれる」
永野先生が指示すると由香里さんは、「はいはーい」と言って作業に取り掛かる。

そう、トラックを運転して来たのにも驚きなのだが、トラックに付いているクレーンを由香里さんが操作し始めたのにはもっと驚きだ。

「由香里の実家は建設屋なんだよ。一時期、音楽関係だけじゃ食べていけない時があって、実家の手伝いをしていた時に、何を思ったか大型とかクレーンだとか色々な資格を習得したんだ。普通、そう言う時の手伝いって、事務仕事だと思うだろ? 由香里はバリバリで現場に出てたからな。まぁ、今回はそれが大いに役立ったが」

永野先生の説明を聞いても、由香里さんが現場で働いている姿を想像できなかった。