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風のごとく駆け抜けて

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「じゃぁ聖香。よろしくね」
葵先輩に両手を握られて言われるが、私には意味がまったく分からなかった。
それに気づいたのか、葵先輩が私から手を離し説明を始める。

「実は聖香が合宿に行っている間に、今年の文化祭をどうするか話し合ったのよ。で、昨年は屋台でお好み焼きをやったでしょ。だから今年は教室を借りて喫茶店をやろうと思って。ズバリ! メイド喫茶」

葵先輩はものすごく嬉しそうな顔しているが、嫌な予感しかしない。

昨年の修学旅行でメイド喫茶に行ったらしく、それ以来メイド服が大好きになってしまった葵先輩。

そう言えば今年の部活紹介の時もメイド服姿だった。

「でね。役割分担もすでに決まってるの。うちと麻子、紗耶がウエイトレス。朋恵と晴美と紘子が調理担当」
料理が上手いはずの葵先輩が調理担当から外れているのは、どう考えてもメイド服を着るためだろう。

紘子と、晴美が調理担当なのは分かる。
この2人は駅伝部の中で料理の上手さが別格だ。

でもなぜ朋恵が? 不思議に思い朋恵を見ると、私の言いたいことがわかったのだろう。

「あの……。確かに私、料理の腕は普通ですけど。それ以上にメイド服を着たくないんです。恥ずかしいから」
と苦笑いをしていた。

あと、麻子がウエイトレスなのも理解が出来る。
麻子の料理はおおいに問題がある。
まさに選択の余地無しだ。

紗耶がウエイトレスを選んだ理由を聞いてみると、「一生に一度はメイド服を着てみてもいいかなと思たんだよぉ」と笑顔で答えてくれた。

で、私は何をするのだろうか。
葵先輩に尋ねてみる。

「もちろん。聖香は呼び込みよ。昨年度のミス桂水だからね。効果は抜群よ」
一体その自信はどこから来るのかと聞きたくなるくらい、葵先輩は自信に満ち溢れていた。

「ちなみに、喫茶店の名前も決まってるかな」

葵先輩の一言に、晴美が一枚のプリントを部室の壁にかかっているホワイトボードへマグネットで貼り付ける。

『昨年度ミス桂水・澤野聖香のいるメイド喫茶』

どこからツッコんで良いのか分からない名前だった。

「ちなみに看板も美術室でほぼ完成間近かな」
「いや、そもそも私、自分がミス桂水だったなんてすっかり忘れてましたよ。だいたい、この人気って文化祭の時だけって話でしたよね?」

「そうよ。ちなみに年度は関係ないわ。毎年文化祭になるとミス桂水は人気が出るのよ。あぁ、そう言えば、聖香に生徒会からプリントが来てたわよ。なんでも、ミス桂水のルールが今年から変わるからよろしくって」

葵先輩が部室に置いてある銀色の事務机から一枚の紙を取り、私に渡してくれた。

『この度、ミス桂水のルールが変更になりました。今年から、タイトル防衛戦を始めます。今年のミス桂水と昨年度ミス桂水澤野聖香さんで勝負をしていただきます。なお、今年から新たに教員参加枠も出来ました』

その後には、私宛に細かい説明が箇条書きで書かれていた。

「ミス桂水ってすごいですし。せ…聖香さん、可愛いですし」
言いながら照れる紘子。
それをみて笑う晴美。

いや、どう考えても私の容姿は関係ない気がする。
なぜなら昨年度のミス桂水はあきらかに運を使う要素しかなかった。

「と、言うわけでだいたい分かったかしら」
葵先輩の一言に私は頷く。

「で、これが私達用のメイド服。こっちが聖香用のメイド服」
なぜ、私専用の服があるのか。
と聞く前に、別のことが気になった。

「いやいや、葵先輩。それなんですか? そもそもなんでセパレートなんですか」
葵先輩が右手で持っている服は見るからに布の面積が少なかった。

「だから、聖香のメイド服だって。呼び込だもん、目立たなきゃ。わざわざ改造したんだから」
一瞬目まいがした。

スカートはランパンよりも短いのではないかと思わせる超ミニスカート。
上は、私がいつも付けているスポーツブラの方がよっぽど布面積が多いと感じるくらいにきわどく、胸元もかなり開いており、なんともセクシー仕様だ。

これを着るとあきらかにお腹周りは露出することになる。

「永野先生? 文化祭ってこんなに露出的な服は許可されるんですか?」
「まぁ、私も教師だし……。さすがに一昨日これを見せられた時には反対したがな。でも……。関西の美味しいお菓子を食べられないって分かったしな」

あぁ……。やっと私の中ですべての意味がつながった。

つまりあれか? 私は明彩大に合宿に行って、現地でお土産を買うのを忘れたからこんな恥ずかしい恰好をしなければならないと言うことなのか?

なんとも厳しい世の中だ。